第23話 魘夢様のお家 ページ25
しばらく歩いた後、魘夢様が何かを思い出したように『そうだ』と立ち止まった。どうしたのだろう? 私も立ち止まる。
「荷物貸して。俺が持つよ」
荷物を持つ私の手に魘夢様の手が重なった。
「そんな、申し訳ないですよっ」
慌てて荷物を自分の方へと引き寄せるが、それより強い力で魘夢様の方へ引き込まれる。
「Aさぁ。俺はAの教祖様ってわけでも、主従関係ってわけでもないんだからそこまでかしこまらなくていいよ。怪しまれちゃうでしょ」
困ったように、呆れたように眉をへの字にする魘夢様。本当に良いのだろうか? 迷う気持ちもあるが、ここで断ったら魘夢様の顔に泥を塗る事になる気がする。
「あの……ではお言葉に甘えてお願いします」
「うん、それじゃあ行こっか」
緊張気味に鞄を差し出すと、魘夢様はそれをひょい、と受け取り歩き出す。私は生まれた時から暮らす家の方をもう一度振り返り、心の中で別れを告げてから彼の後に続いた。
夜中近くになり、やっと魘夢様が日中暮らしている家へと着いた。周りには他に家はあまりない。
「入っていいよ」
先に入り、明かりを灯した魘夢様が床に荷物を置きながら入るよう促す。
「お邪魔します」
睡眠や食事を摂らないからか、部屋の中はあまり生活感がない。そして、魘夢様の住んでいる家だから当たり前だけど彼の香りがした。なんとなく、彼に包まれているようで安心する。なんて、私は変態か。
「うふふ、今日からAもここに住むんだから『お邪魔します』じゃなくて『ただいま』でしょ」
「……そうでしたね」
呆れながらも魘夢様の口元には笑顔があり、怒っていないのが伝わってくる。
「台所とかお風呂は好きに使っていいよ。鬼は料理なんてしないから周りの家の奴らに怪しまれてたし丁度良いや」
確かに、ここまで生活感がないと周囲に怪しまれるのも無理はない。そういえば、食事や睡眠をしない事はわかったがお風呂にも入る事はないのだろうか。聞いてみよう。
「あの、魘夢様はお風呂は入るのですか?」
あれ、口に出してみると少し失礼な質問な気がする。慌てて口を抑えたけど、魘夢様は気を悪くする様子もなく頷いた。
「うん、入るよ。と言っても人間の血とかを洗い流す程度だけどね。Aは冷えると思うから湯船で温まるといいよ」
「ありがとうございます」
優しい言葉に心は温まるが頭は冷静になる。つまりこの家のお風呂は人の血をたくさん流し続けた事になるのかな。
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包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» ですね! (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そうなんですよね!ムキムキ過ぎないところがまた素敵なんですよね!(続きはこみゅーの方にてお話しましょう!) (2021年1月10日 21時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» 特に映画の上半身裸になっているとこ((((悪夢見せてあげようか?by魘夢 (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そう仰っていただけて、嬉しいです!映画の魘夢様も、原作の魘夢様もすごく可愛いですよね!コメントありがとうございました! (2021年1月10日 12時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - やだ魘夢可愛いすぎ (2021年1月10日 2時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
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