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第21話 正太郎 ページ23

「民尾君、じゃあAをお願いね」

荷物をまとめ終え、玄関に立った私達に向き合う形でお母さんが声をかける。その横で正太郎が何か言いたげにこちらを見上げていた。

「……あ、あの、民尾義兄さん」

私が片付けをしている間に距離が縮まったらしい。いつの間にか呼び方はお義兄さんから民尾義兄さんへと変わっていた。

「どうしたの?」

緊張がちに言葉を発した正太郎に、魘夢様は視線を合わせ、言葉を待つ。

「……お姉ちゃんはね、少し頼りないところもあるけど悪い奴じゃないから……、だから怒らないでやってね」

「……正太郎」

驚いた。まだ未熟だと思っていた正太郎がそんな事を考えていたなんて。少し不安そうな表情に目が潤む。

「大丈夫だよ、俺はね、Aのそんなところも好きだから。怒ったりなんてしないよ」

胸の前で拳を作る魘夢様。言葉の真意は彼と私しか知らないが、その姿に力強さを感じたのだろう。正太郎は安心したように顔を綻ばせた。

「ありがとう、お姉ちゃんを選んでくれた人が義兄さんで良かった……」

うるうるした瞳で微笑む弟に心の中が和むのを感じる。普段生活をしていると見落としがちになってしまうけれど、この子は私の事を大切に思ってくれていた。そんな事に今更ながら気付く。

「それは間違ってるぞ。弱音なんか吐いた時は引っ叩いて根性を叩き直してやれ」

言葉と共に笑い声をあげるお父さん。冗談だと笑えたら良かったが、実際しばしば手を挙げられた事があったため笑えない。お母さんも少し困った顔で笑っている。

正太郎は納得いかないという顔をしている。まだまだ小さいながら、一生懸命考えているのだ。そんな姿が堪らなく愛おしい。この子には幸せになってほしいと素直に思う。

そして、魘夢様はすとんと表情が抜け落ちた顔をしていた。つまり真顔である。その冷めた表情に少し不安が掻き立てられたが、すぐにそこにはどこか作り物めいた笑顔が浮かんでいた。

「……俺はそんな乱暴で野蛮な事はしませんよ、お義父さん」

「なんだって?」

魘夢様の言葉にかっとしたようにお父さんが一歩前に出る。

「では、失礼します」

唐突な挨拶と共に魘夢様は引き戸に手をかけた。興奮気味のお父さんの後ろでは、正太郎が悪戯っぽい笑顔を浮かべている。

冷たい風が流れ込み、頬を撫でた。ひんやりとした空気が、これから新しい生活が始まるのだという事を改めて感じさせる。最後になるかもしれないのだ、しっかり挨拶をしなくては。

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包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» ですね! (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そうなんですよね!ムキムキ過ぎないところがまた素敵なんですよね!(続きはこみゅーの方にてお話しましょう!) (2021年1月10日 21時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» 特に映画の上半身裸になっているとこ((((悪夢見せてあげようか?by魘夢 (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そう仰っていただけて、嬉しいです!映画の魘夢様も、原作の魘夢様もすごく可愛いですよね!コメントありがとうございました! (2021年1月10日 12時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - やだ魘夢可愛いすぎ (2021年1月10日 2時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぶるうべりぃ♪ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年11月27日 22時

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