魘夢様に堕ちる (ページ18)

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第16話　鬼と日光ページ18

「そうだ、お姉ちゃん」

「うん？どうしたの、正太郎」

襖から離れ、正太郎が私の左隣に座る。

「今日はお姉ちゃんがいないからいつもより広いよ」

私の腕を引っ張り、悪戯っぽく私を見上げながら結構な事を言った。素早く、空いている方の手で正太郎の頬を思い切りつまむ。

「嫌ね、正太郎ったら」

少し前までは小さかった弟はお母さんと同じ布団で寝ていた。しかし、ここ最近は狭い部屋に布団4枚を敷き、川の字になって寝ていたため、今日広く感じてしまうのも無理はない。

「痛いって、離してお姉ちゃん！」

「お姉ちゃんも正太郎に今日は広いとか言われて心が痛かったんだからねっ」

冗談めかして言ったが実際、家を出たらもう一緒に寝る事はないのだと考えると少し寂しく感じたのは事実だった。

「あの、魘夢様。先程、夜明けまで時間があるから大丈夫と仰ってましたけど、太陽の光を浴びるとまずいのですか？」

話し合いの後、お風呂にも入り、寝巻きに着替え一段落したところで気になった事の一つを聞いた。ちなみに魘夢様は先程の服装のままだ。

昔、おばあちゃんから妖怪や幽霊は夜にしか現れないと教えてもらった事がある。勿論魘夢様は妖怪や幽霊とは別だが、関係はあるのかもしれない。

「ああ、よく覚えていたね。そう。俺達鬼は太陽の光を浴びると身体が灰になって無くなっちゃうんだ。骨も残らない」

「そんな、骨までっ」

魘夢様が淡々と恐ろしい事実を述べる。嫌だ、魘夢様のそんな姿見たくない。

「ふふっ、怖がらなくて大丈夫だよ。俺はそんなへましたりしない。日光で死ぬ鬼なんて滅多にいないし、いたとしてもそれは間抜けな鬼だからね」

怖がる私を見て魘夢様はけらけら笑う。その様子に安心した私を見計らって魘夢様は話を進めた。

「だから、俺はAの家族が起きるより先にここを出るね。鬼は眠ることもないし、みんなが寝静まった後、適当に出るよ」

確かに私の家族が起きるのは、日が上った後だ。起きるのを待っていたら、魘夢様がここから出られなくなってしまう。

「わかりました、魘夢様は仕事の関係で朝早く出たと伝えときますね」

「うん、理解が早くて助かるよ」

私の返事に満足気に頷いた後、思い出したように魘夢様はそうだ、と呟いた。片手を床に突き、もう片方の手の人差し指でとん、と私の額に触れる。

なんだろう？不思議に思って魘夢様を見返した。