魘夢様に堕ちる (ページ13)

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第11話　気になった事ページ13

「な、なんのためにですか？」

緊張気味に歩みを止める。魘夢様と向き合う形になりながら、頭の中で迷いや不安が渦巻いているのを感じた。まさか、私の家族を食べてしまうのか？それは流石に避けたい……。

「なんのためにって……。Aを送り届けるためにだよ。あれぇ、もしかして俺がAの家族を食べると思ったのかな？」

「……は、はい。でも、違うのですよね……？」

祈るような気持ちで魘夢様を見上げる。私が初めて彼の前で見せた怯えた表情に彼はご満悦の様子だった。

「うん、そうだよ。俺は今、腹が膨れてるし、無闇に民家を襲うと目立つからね。鬼狩りに目をつけられると面倒だし」

鬼狩りとは？気になったが、今は話の腰を折りたくなかったから敢えて聞かない事にした。他に気になる事もある。

「あの、帰っても良いのですか……？それに私、魘夢様に家の場所を伝えていなかった気がするのですけど……」

もう家に帰る事はないかもしれないと思っていただけに少しの期待がこもる。相談は受け付けない両親ではあったが、悪い人という訳ではない。育ててくれた挨拶もせず家族と別れるのは流石に抵抗があった。

家の場所だって魘夢様には伝えていなかった。なんとなく、彼に着いて歩いていたが気づいたら家の近くの通りに来ていただけなのだ。

「ふふ、質問が多いね。いいよ、今は夜明けまで時間もある事だし教えてあげる。Aは俺に喰われたらもう家族に会う事はないからね。最後に一度会わせてあげようと思って」

「……え、会わせてくれるのですか？」

意外だった。そんな優しさがあったとは。唖然とする私に答えるように彼の両手が挟み込む。

「優しさからじゃないよ？家族と別れるAの辛そうな顔が見たいから。今生の別れの時君はどんな顔をするのかなぁ？」

私の目をじっと覗き込む魘夢様。口元には歪な笑みが浮かんでいる。きっと、私の中の恐怖や悲しみでも探しているのだろう。私からも彼の瞳の中がよく見えた。

「……それは、わからないですっ」

慣れない行為に顔が赤くなるのを感じた。恥ずかしくなり、思い切り目を逸らす。それを合図に魘夢様はそっと手を離した。