第1話 楽しかった頃 ページ1
帰りの汽車に乗り込み、座席に座り無意識に溜息を吐く。
いつものようにただ起きて、ただ食べて、仕事をして、家に帰る───。特に何もない毎日は良く言えば平和なのかもしれないが、つまらない……と感じる日も少なくなかった。
「(贅沢な悩みだとはわかっているけど……)」
窓の外の景色をしばらく見つめてていると、不意に声をかけられた。
「……切符を拝見します」
いつの間にか側に来ていた車掌に切符を手渡す。普段と変わらない光景だ───。ああ、今日も何もなかったな……。そう思いながら、私はいつの間にか微睡んでいた。
「……Aちゃん、Aちゃん! 早く早く!」
目の前を着物を着た少女が走っていく。学校に入って初めて友達になった文(ふみ)ちゃんだった。
「ま、待って!」
慌てて追いかけようとしたせいか、つんのめり地面へと倒らてしまった。手の平の痛みに顔をしかめながら私はなんとか立ち上がる。
「もー、何やってるのAちゃんっ」
目の前へと戻ってきた文が面白そうに笑いながら、手を取る。そんな様子に懐かしいな……、そう思いながら自身の手を重ねた。
「はは、久しぶりに走ったからつい……」
最後に走ったのはいつだっけ……? 運動不足の自分に苦笑しながら、着物についた埃を慌てて払う。
「久しぶりって……。朝遅刻しそうになって一緒に走ってきたじゃない」
何言っているんだ、とばかりに私を見下ろす彼女に思わずあ……、と間の抜けた声を出す。
「そうだったね!」
そうだったっけ……? 内心そう思わなくはなかったが、今はどうでも良い気がした。
「みんな待っているから行くよ!」
私の手を強引に引っ張り走り出すその行為には友達に対する愛情が込められていた。
「……うんっ」
今日は何をして遊ぶんだろう……? そんな期待に胸を躍らせながら彼女に続き走り出していた───。
「何か用? Aちゃん」
教室の机に座りながら、私を見上げる文に言葉が詰まる。
高学年になっても、休み時間はいつも2人で過ごしていた。特に用事があった訳ではないが、たわいもない話をする時間がたまらなく楽しかった。
変わった事といえば、文は体育会系の部活に入った事、私は文化系の部活に入り帰る時間が合わなくなった事だけだった。
『部活が違ったってふみ達は、ずっと親友だよ! 2人で1つ!』
部活が別れる事に不安になっていた私に彼女はは心配する必要はないと、そう言ってくれた。
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包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» ですね! (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そうなんですよね!ムキムキ過ぎないところがまた素敵なんですよね!(続きはこみゅーの方にてお話しましょう!) (2021年1月10日 21時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» 特に映画の上半身裸になっているとこ((((悪夢見せてあげようか?by魘夢 (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そう仰っていただけて、嬉しいです!映画の魘夢様も、原作の魘夢様もすごく可愛いですよね!コメントありがとうございました! (2021年1月10日 12時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - やだ魘夢可愛いすぎ (2021年1月10日 2時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
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