１２話 ページ13
─ノースside─
センゴク元帥に喧嘩を吹っ掛けて部屋を出た。いやぁ、"仏のセンゴク"がしちゃいけない表情してたわ。殺られてもおかしくない雰囲気だった。まぁ、私も顔に出てないだけで割とキレてたんだけど。
角を曲がったところで壁に背を預けたじーちゃんを見つけた。目が合った瞬間に抱きしめられてとても苦しい。
「やっと出て来よったか！！」
『じーちゃん、何でここにいんの？』
「ノースを待っとったに決まっとろうが。おぉ〜愛しいな〜」
『そーかそーか』
「おー、そうじゃ。ノース、お前センゴクと何を話した」
少し離れてそう言うじーちゃんの表情も声色も真剣なもので一瞬で人が変わったみたいだ。最後なんて疑問文でもないもんね。話せ、って言ってるようなもんだ。じーちゃんが心配するようなことは何一つしてないんだけどな。
『約束しただけだよ。私がじーちゃんの悲しむようなことしないの知ってるでしょ？』
「それは知っとるが...わしにも言えん約束事か？」
『他言無用なの、ごめんね。何も心配いらないよ。ほらほら、じーちゃんもちゃんと仕事しないと〜。部下に示しがつかないでしょー』
半ば無理矢理だが背中を押して距離を取る。振り向いたじーちゃんに手を振って自分の部屋に向かう。じーちゃんは私が心配なだけだ。無理してないか、自分を犠牲にしてないか。私がそんなことしないって分かってるのはずなのにね。こんなに愛されて幸せモンだなー。
もう一人、心配させちゃってる子がいるんだけど。
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『待っててって言ったのに。軍曹ちゃんは真面目だねぇ』
部屋に入れば書類整理をしている姿が。私の声に肩を揺らした後躊躇いがちに振り向いた。ニコ、と笑えば眉をよせて怒ってますアピール。落ち着いたけど機嫌はなおっていないらしい。
『"ポートガス・D・エース"が私の兄なのは知ってる？』
「はい、スモーカー中佐から聞きました」
『そっか。軍曹ちゃんは優しいから、いきなり私と同じ名前の賞金首が現れて困惑してたところで、私に元帥からの招集がかかって混乱しちゃったんだね。心配してくれてありがとね』
「それだけ、ですか？...私には何も言えませんか？」
『まだ、誰にも話せないんだ。ごめんね』
謝りながら撫でれば泣き出してしまった。あぁ、ホント酷い奴だな、私。こんなに慕って貰っといて、同じだけの心を返してあげられない。こんな弱虫が仮にも"正義"を背負うなんて、とんだ笑い話だ。
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作者名：えると。 | 作成日時：2022年9月2日 22時
