６話 ページ7
─アイスバーグside─
「ンマー...ノースにしては随分と思い切ったんじゃないか、その格好」
『濡れたコート羽織るよりはマシですけどねー』
カリファに連れられて帰って来たノースはいつもより随分と露出の多い服を着ていた。カリファと比べれば大人しめではあるのだが。まだ濡れているであろうコートはそのままに他の衣類は袋に入れているようだ。仕事中は着ているのだと言うが俺はノースに会ってからのこの２年間未だにその姿を見たことがない。手には持っているんだがな。
『パウリーが見たら叫ぶんでしょうね、ハレンチだーって』
「アイツは少し初心な所があるからなぁ」
今日は予定をオールキャンセルして暇な為ノースを茶会に誘えば一言で了承された。カリファは仕事があると部屋を出て行き、カクたちも仕事がある為ノースの相手が出来ないのだ。遊びに来る間隔も時間もバラバラで、今日みたいに仕事ついでだったり暇だという理由だったりする。
『あ、最新の新聞あります？』
「それならここにある、ついさっき届いたものだ」
『ちょっと拝借しますね』
思い出した、というように聞いてきたノースに新聞を渡せばパラパラとめくっていく。挟まれていたらしい紙がヒラリと落ちた。拾い上げたノースがジッとそれを見つめるものだから不思議に思って首をかしげる。どうした？と聞けばバッ、と顔を上げ、
『じゃーん！兄が海賊として名を上げました〜！』
満面の笑みで手配書を見せてきたノースは心底嬉しそうだった。話には聞いていた彼女の兄がとうとう賞金首になったらしい。海兵が賞金首の誕生を喜んでも良いものなのかとも思うが、兄の話をするノースの様子を思い出せば立場など関係ないのだろうと納得する。
『いやぁ、我が兄ながらかっこいいな。三年ぶりに見ましたけど案外変わらないものなんですね』
「ンマー、ノースは変わらないな」
『そうですか？あ、でも階級は上がりました！』
「そうだな、来年には大将か？」
『ないですねぇ。大将にはならないので』
「へぇ、また何で？」
『政府の犬になるつもりは微塵もないので。市長さんも気をつけてくださいよ？上の人間にろくな奴いないんですから』
「肝に銘じておこう」
『ぜひとも』
軽い話し方とは逆に真剣な表情だ。唯の愚痴ではなく俺への警告だろう。このことがバレれば彼女もただでは済まないだろうに。そんな優しさに周りも惹かれ慕うんだろう。初めて会った日から何も変わらない。
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作者名：えると。 | 作成日時：2022年9月2日 22時
