２５話 ページ26
─ノースside─
「何しに来たんだよ」
『もちろん、エースに逢いに』
「っ！！」
ぐいっ！
「オレが笑ってお前を出迎えるとでも思ったのか！？怒ってるとは思わなかったのかよ！！勝手に消えた挙句に海軍になったくせに！！よくもオレに会いに来たなんてほざけるな！！ふざけんじゃねェぞ！！」
殴られた頬が痛い。きっと腫れてる。口内が切れて口端から血が垂れた。
エースに本気で殴られたのは初めてだなぁ。いつの間にかこんなに強くなっちゃって。
胸倉を掴まれた私よりも、目の前にいるエースの方が苦しそうだ。
何でそんな泣きそうな顔してんの。何でそんな怒ってんの。
なんて、私のせいだって知ってるんだけど。
「何とか言えよ、なあ！！」
『...怒ってるだろーなと思ってたよ。エースからしたら私がエースを裏切って敵になったんだって思ってもおかしくないから』
「まるで違うみたいな言い方すんだな。何で海軍になった。何でオレたちに何も言わなかった。裏切ってねェってんなら答えろよ」
『何も言わなかったのは言ったらエースもルフィも止めると思ったから。それに、あー、これは別に自分を卑下してる訳じゃないんだけど。私がいなくてもエースは絶対海賊になるって信じてたから。まぁ、思ったより早く大物になったけど』
「海軍になる必要があったのか。じじいに言われたからじゃねェのか」
『じーちゃんは関係ない。私の為にも必要だったんだよ』
「...」
手がゆっくり離されて膝をついた。エースは俯いたまま動かない。
周りを囲んでたクルーたちは空気を読んで船内に行ってくれた。扉の直ぐ向こうに居るけど、私がエースの本当の妹で尚且つ攻撃の意志はないと判断したんだろう。
ガチャンッ
手と足に付けられた枷から抜け出してエースの手を引っ張った。
驚いたままこっちに倒れて来たエースを思いっきり抱きしめる。私と違う鍛え上げられた身体と高めの体温。
腕の中で暴れるエースを押さえて頭を撫でまわす。ずっとこうしたかった。会いたかった。触れたかった。
大好きな家族と離れる決断をしたのは私でも、やっぱりちょっとは寂しかった。
「おいやめろって！！離せよ！！クソ、力強いな！！」
『んはは、そりゃそーだ。これじゃ足りないくらいエースのこと大好きだからねー』
「お前は何でそう恥ずかしい事をしれっと言えんだよ」
『時間は有限だからねー。...裏切らないよ、絶対に。裏切る理由もない』
「...あァ、分かってる」
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2022年9月2日 22時
