41 ページ42
｢どうでしょう。｣
ニッコリ微笑むが、イゾウさんの顔は曇ったままだ。
眉間の皺がどんどん深くなっていく。
私はまだオロチに囚われている。
姿見えぬオロチを思い出しては恐怖する。
今でも夢に見る程鮮明に。
私は汚れている。
国を見捨てて来た私は、なんと罪深いのだろうか。
だから、そんな私が愛を望んではいけないんだって。
この船に乗っていると錯覚してしまう。
私も幸せになっていいんだって。
でもそれはダメなの。
今も国では苦しんでいる人達がいるんだから。
私にそんな資格はないの。
例え皆が許してくれようと、私が自分を許せないんだ。
｢そんな顔しないで下さい。私は大丈夫ですから。｣
｢いや、無理してんだろ。そのくらい見てりゃわかるさ。｣
｢無理なんて…｣
｢してるさ。それを隠す為にこうやって必死に仕事してんだろ？｣
｢っ！それは…｣
｢考えなくていいように、そんな時間作らねェようにって仕事で埋めてるんだろ。｣
図星だった。
頼られるのが嬉しいと思っていたのも本当だし、全部本当なんだけど、一番の理由はそれだった。
｢いいかお嬢。確かに今もワノ国では辛い思いをしている奴はいるだろう。でもお前さんも十分過ぎる程苦しんだだろ。目の前で親を殺 した男の側で笑ってなきゃいけねェのは、身を切られるように辛かっただろ。そうやって身も心も擦り減らしながら、貧しい人達の為に金稼いで尽くして来たんだ。そうやって頑張って来たお嬢を責める奴はいねェよ。｣
｢でも…っ！？｣
イゾウさんは尚も否定しようとする私を抱き締めた。
｢イゾウさん…？｣
｢これ以上自分を否定するな。もう自分を許してやれ。お前さんは十分よくやったよ。｣
｢でも自分が許せなくてっ！一人逃げ出した私には、幸せになる資格なんてないから…！｣
｢そんな事はない。お嬢は自分で自分を縛り付けて生き方を狭めているだけさね。お嬢は…おでん様の何を見てきた？あの人は自由な人だった。おでん様と別れて、おれはこの船で世界の広さを知った。オヤジは偉大な人だ。オヤジの為に生きたい、海賊王にしてやりたい、そう思った。だからな、A。生き方を決めるのはお嬢自身なんだ。何が正しいかなんて誰も分からねェ。この船で世界を見て、それから決めたって遅くはないだろ？｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 408人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨音(プロフ) - なのさん» 逆ハー物は書いた事がないのでちゃんと書けるか不安ではありますが、楽しみにしてもらえると嬉しいです♪ (2022年7月5日 21時) (
レス) id: 95f98cf5bb (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - なのさん» ご希望に添った物とは違うかもしれませんが、実はひっそりと逆ハーっぽい小説を書いてます…！公開するのはまだ先になりそうですが、落ち着いたら公開しようかと思ってます！ (2022年7月5日 20時) (レス) id: 95f98cf5bb (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - なのさん» ありがとうございます！お話ではなく、新たな小説でしょうか？どのような物か、聞いてからのお返事でも大丈夫でしょうか？ (2022年7月5日 20時) (レス) @page39 id: 95f98cf5bb (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - ゆらゆらさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！素敵な物語に出来るように頑張りますね♪ (2020年9月11日 16時) (レス) id: a0dbe60605 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらゆら(プロフ) - ありがとうございます！昨日読み始めたばかりなのですがイゾウさん大好きなので嬉しいです！応援してます(^^) (2020年9月11日 9時) (レス) id: 7dbfdcb3b1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨音 | 作成日時：2020年9月1日 20時
