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父さんと母さんの人生を、誇りに思う。
少なくとも、お前に馬鹿にされるようなものではなかったと。
もはや反論もできない２人に代わって、私が。
『母さんの足は島中の人を、小さな女の子を救った！』
―「母さんの足はね、どこまでも跳ねていける、魔法の足なのよ」
私を抱えて、ムスビ島を跳ね回って散歩してくれた。
『父さんの手は、その銃弾でお前の手を貫いた！』
―「父さんの拳銃に、撃ち抜けないものなんてないんだぞ？」
ばあちゃんの道場で、的の中心に大穴をあけて見せてくれた。
『２人は自分の正義を貫き、守った…その生き様も死に様も、これ以上に美しいものがあるか！！』
きっと、悔しかっただろう。
悲しかっただろう。辛かっただろう。
けれど、そこに自分の行動を悔いる気持ちはなかっただろう。
真っ直ぐ、前を見続けていただろう。
「何を言ったところで…俺を殺したところで、お前の両親は戻らねェぞ。コラソンもな！！」
『…そうだね。命は戻らない』
ぴくりと、重ねたローの手が微かに動いた。
ドフラミンゴを見据えたまま、右手に少し力を入れる。
『けれど正義は消えない。愛は潰えない』
「…親子で世迷言とは、救えねェ家族だ」
気にするな。
ドフラミンゴの言葉に返す必要はない。
『受け継ぐ者がいれば、真の死は訪れない』
だってこれは、詠唱だから。
「！！何だ、肩が…！」
ドフラミンゴの肩は淡く光っていた。
さっき、私の拳が掠めたところ。
ニッと口角を上げ、最後の言葉を紡ぐ。
『あの日の誓いを』
「A、お前何をしやがった…！」
光が姿を変える。
ドフラミンゴの肩に、花の紋様が浮かび上がった。
これは、新しい花言術。
まだ使い慣れなくて消耗は激しいし、対象に触れなくてはいけないのが難点。
『花言術――【トリカブト】』
紫色の綺麗な花。
紋様はじんわりと沁み込むように消えた。
ドフラミンゴが私に飛びかかる。
『…気を付けた方がいいよ』
「あ？…っぐ！？」
飛びかかった身体が、私まで届くことなく勢いをなくす。
奴はフラフラとその場でたたらを踏んだ。
『【トリカブト】は猛毒植物だから』
ドフラミンゴは手足がうまく動かない様子だ。
恐らく、強い痺れがあるだろう。
『さっき、ローと"Ｄ"の話をしてたでしょ』
「それがどうした…！！」
『２人じゃないわ』
「…あぁ？」
２人じゃない。
この場にいる"Ｄ"は、もう１人。
『――私も"Ｄ"よ』
「！！」
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作者名：さやま | 作成日時：2022年9月20日 16時
