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『ばあちゃん、じいちゃん。今までありがとう』
「…A。私達は、お前を強くした。
戦闘にしろ治療にしろ、お前の技術と知識は、この広い海で大いに役立つだろう」
「本当に、優秀な弟子だよ」
じいちゃんは「何たって、僕らの孫でもあるんだから」と笑う。
今はかなり前世に引っ張られている私は、精神的には２５歳なのだが、こうして可愛がられるのは素直に嬉しかった。
「私達がお前を弟子にしたのは、お前自身が望んだからだ。
…サシアとリンツの…両親の仇をとりたいと、だから強くなると、お前が決めたから」
真っ直ぐに私の目を見つめるばあちゃんに、弟子入りした５歳のあの日が思い浮かぶ。
「だが、私達の想いは少し違う」
「…確かに、２人の死は辛く、悲しく、悔しいものだった」
「あぁ。私だって、仇をとりたいと思ったさ」
両親の死の報せは、彼らの海賊団の船員が、最後の力を振り絞って電伝虫で届けてくれた。
報せの内容も、それを聞いた祖父母の様子も、全て鮮明に覚えている。
「けれど…あの日、強くなって仇をとると誓ったお前の…」
「…Aの、表情を見た時にね」
「私達は、別の誓いを立てたんだ」
へぇ、と声が漏れる。初めて聞く話だった。
前世の記憶が蘇ってから、ずっと気になってはいたのだ。
娘夫婦の仇をとると、復讐心を静かに燃やしている孫を、２人はどんな思いで弟子にしたのだろう…と。
『どんな誓いを立てたの？』
「お前を、強くするという誓いさ」
「ただそれは、仇をとらせるためのものじゃなくて」
ばあちゃんの手が、私の頬を撫でた。
傷跡の多い、女性にしては大きく武骨な手。
「お前が、お前の大切なものを守れるように。助けたいものを、助けられるように」
「そう願って、ラザはお前に薬学や医学を教えた」
じいちゃんは柔らかく目を細めて、微笑んだ。
穏やかで優しい、患者を安心させる目。
「君が、君自身を大切にできるように。理不尽に脅かされることのないように」
「そう願って、ユリは君が戦う術を身に着けられるよう鍛えた」
あぁ、そうか…と、妙に納得した。
祖母はいつもその手で私の背中を押し、祖父はいつもその目で私を見守ってくれていたんだ。
両親を喪った悲しみの中で、私が復讐心だけに囚われてしまうことがないように。
強くなろうとしすぎて、弱さを忘れてしまうことがないように。
進む道を、見誤らないように。
独りきりに、なってしまわないように。
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うみ(プロフ) - 読んでいく内に作者さんとはアニメの好みが似てる気がしてきた。Dグレいいですよね……！！！ (2022年9月3日 22時) (
レス) @page50 id: 9a2ffdd6e5 (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - めちゃめちゃ好きです！！更新楽しみにしてます！ (2022年8月31日 4時) (レス) @page28 id: d0a5d42c58 (このIDを非表示/違反報告)
つな(プロフ) - あまりにも素敵なお話しすぎて感動してしまいました、更新楽しみにしてます！ (2022年8月31日 1時) (レス) @page28 id: 552499de56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さやま | 作成日時：2022年8月29日 16時
