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「はぁ？知ってるよ、コトコトの実だろ。口にした言葉が、その意味のまま現れる」
『よく知ってんじゃん』
問いに的確に答えたエースに、Aはまた笑った。
よく笑う女だ、とエースは思う。
「いいよな、そんな強くて使いやすい力があってさ」
『…そんなに良いものかな』
続いたAの言葉は、少しの不安と恐怖を滲ませていた。
数日の仲とは言え、彼女のそんな声を聞くのは初めてだった。
『私は時々、この能力が恐ろしくて堪らなくなる』
「…なんで」
『例えば、私がこいつの息の根を止めたい！って強く思いながらそれを言葉にすれば、その人は本当に呼吸を止める』
彼女は能力を「術」にして使う言葉を絞り込み、さらに動作や詠唱といった条件を付けて制御している。
だが本来、「コトコトの実」は言葉だけで十分具現化できる能力。強いイメージと、見合った媒介物さえあれば、何でも。
『たとえ冗談でも、私の気持ちがこもってれば、何でも実現されちゃう可能性があるの』
「…」
『私は…この能力に限らず、言葉は枷になるんだって思う』
エースの頭の中で、またあの声が響いた。
自分の生を、否定する言葉。
『言葉は凶器になり得る』
「…そう、だな」
確かに、あの言葉達は彼にとってナイフより鋭く、毒より苦しいものだった。
思わず拳を握りしめるエースを見て、Aは「でもね」と声色を変える。
『でも同時に、私はこの能力が好きだし、言葉は凄いって思ってる』
『言葉は、人に想いを伝える手段になるから』
サァ、と少し冷たい風が吹く。
Aの髪が揺れて、月明かりに照らされる。
エースは自分がAに見惚れていたことに気付いて、また視線を逸らそうとする。
だが、できなかった。
彼女の瞳の色に、強く惹かれる。
『…エース。皆で家族になろう。
ルフィとサボと、私と、エースで』
青のグラデーション。
海と、空の色。
自由の、色。
『貴方がどこの誰だろうと…海賊王の子どもであろうと、関係ない』
「！お前まさか、知って…」
『…私にとって、言葉は本当に大事なの。それを踏まえて、聞いてね』
エースの瞳が揺れる。それでも、彼女を見続けた。
Aもまた、彼を真っ直ぐ見る。
『貴方には、健やかに、心穏やかに。大切な人に囲まれて、笑顔で過ごしていてほしい…私はそう願ってる』
エースの目から、涙が一筋溢れた。
『忘れないで。ミエット・Aは、ポートガス・D・エースを、愛してる』
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うみ(プロフ) - 読んでいく内に作者さんとはアニメの好みが似てる気がしてきた。Dグレいいですよね……！！！ (2022年9月3日 22時) (
レス) @page50 id: 9a2ffdd6e5 (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - めちゃめちゃ好きです！！更新楽しみにしてます！ (2022年8月31日 4時) (レス) @page28 id: d0a5d42c58 (このIDを非表示/違反報告)
つな(プロフ) - あまりにも素敵なお話しすぎて感動してしまいました、更新楽しみにしてます！ (2022年8月31日 1時) (レス) @page28 id: 552499de56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さやま | 作成日時：2022年8月29日 16時
