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『私、すぐに出発しないと。海軍とは会いたくないので』
「海軍に…？あなた、海賊なの？」
「だとしても気にすることはねえよ、俺らの恩人なんだから」
「私達はそうでも、海軍はそうもいかないでしょ」
『海賊ではないんです』
そう、海賊ではないのだ。
私は１人で旅しているだけで、悪いことをした覚えはない。
けれど、海軍にとってはそうではない。
私の両親、そして祖父母は海賊だった。いわば海賊家系の私が海に出ていれば、海軍は放ってはおかない。
即逮捕なんてことはしないだろうけど、面倒ごとにはなりそう。
折角旅に出たのに、早々に厄介なことになるのは避けたかった。
仇討ちという、あまり人には言えない目標もあるし。
というわけで、旅に出てから半年以上。
道中で今日のようにクズをボコすことも数度あったが、その全てで海軍への引き渡しは島民に任せ、私は退散している。
『ちょっと、諸々の事情がありまして』
「なら、仕方ないわね…」
「宴は諦めるか…」
「じゃあ代わりに、航海に必要なものがあれば何でも言って！」
「お、そうだな！食材でも何でも用意するぞ」
『わ、それは助かります』
有難い提案だ。
前回寄った島は辛い味を好む土地柄で、食材を満足に仕入れられなかった。
私の船の食糧庫は現在、ほぼ空。辛いものは苦手なのだ。
その提案を聞きつけたのか、他の島民も集まってきた。
次々と「魚ならうちの魚屋が」「野菜は任せろ」「服もあったほうがいいんじゃない？」「薬草も用意できるぞ」と申し出てくれる。
お言葉に甘えて、ほしいものを片っ端からお願いした。
何とか当初の目的は果たした上で、海軍にも会うことなく出発できそうだ。
「ねぇ、おねーちゃん！」
『なぁに？』
騒々しく動き回る大人達を他所に、子ども達が私の隣に来て、手を引っ張る。
まだ１０歳に満たないであろう彼らに、しゃがんで視線を合わせた。
「あのね」
「おねーちゃん、旅人さんなの？」
『うん、そうだよ』
「１人で旅してるの？」
「すごーい！」
子ども達は、キラキラと瞳を輝かせる。
この子達と今の私では、年齢差はそんなにないはずだ。
でも１人で海に出て、こうやって見知らぬ島を訪れ、あまつさえ大人も手出しできなかった海賊をぶっ飛ばしたというのは、十分憧れになり得るのだろう。
「じゃあさじゃあさ！」
「この島の次は、どこに行くの？」
子ども達の問いかけに、私は笑顔で答えた。
『フーシャ村だよ！』
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うみ(プロフ) - 読んでいく内に作者さんとはアニメの好みが似てる気がしてきた。Dグレいいですよね……！！！ (2022年9月3日 22時) (
レス) @page50 id: 9a2ffdd6e5 (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - めちゃめちゃ好きです！！更新楽しみにしてます！ (2022年8月31日 4時) (レス) @page28 id: d0a5d42c58 (このIDを非表示/違反報告)
つな(プロフ) - あまりにも素敵なお話しすぎて感動してしまいました、更新楽しみにしてます！ (2022年8月31日 1時) (レス) @page28 id: 552499de56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さやま | 作成日時：2022年8月29日 16時
