三国恋戦記～大空に羽ばたく鳥のように～ (ページ1)

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第一章ページ1

『軍師殿は丞相の信を完全に失ってしまったらしい』

『まるで鳥籠に入れられた鳥のような扱いを受けているそうで』

このような噂が次々と流れ始めた。

というのも、Aは先の孟徳暗殺未遂事件の後、人の出入りがない部屋に移された。

そこで、足に枷を付けられ、外に出ることを禁じられたからだ。

部下の中にはAに好意を抱いていた者もおり、孟徳のAの処遇に対して異議を婉曲(えんきょく)に訴える者もいたが、孟徳はその言葉をすべて聞き入れなかった。

それどころか、その部下は首を切られた。

『やはり、丞相は冷酷非情なお方だ』

『丞相は心すらお持ちでない』

周りの兵士たちは皆、孟徳の対して、そんな印象を強く受けるようになった。

・

孟徳は回廊を足早に歩いていた。

つまらない軍議に会談、書類の整理など実務がたまっているからだ。

「あーあ…本当に『丞相』は大変だなぁ…」

丞相でさえ大変なのに、魏公になったら…。

はぁ…と深いため息がもれた。

『大丈夫ですか、孟徳さん？何かあったんですか？』

「A、ちゃん…？」

思わず孟徳は後ろを振り返る。

だが、当然そこにはAなどいない。

孟徳は自分がAに対してどんな処遇をしているかを思い出し、自嘲の表情になった。

「彼女の羽を切ったのは…俺だ」

決して、彼女の周りに囲いを作ることはあっても、彼女の羽を切るようなことはしない、と…。

そうしようと、思っていたのに…。

孟徳の胸の奥が、ずきんと痛んだ。