｜ ページ26
.
「江口さん飲み終わりました？コップもらいまーす」
「いいよいいよ！それくらいやらせてよ」
「お客さんはゆっくりしててください！！」
「じゃあ隣で見てる」
「なにそれ(笑)」
宣言通り、コップを濯ぐ犬飼の隣に立つ江口。
改めて並んでみるとすごい身長差だ
「ねえわんちゃん」
「なんですかー」
「……マフラー、わざと忘れたてたらどうする？」
「え？」
「わんちゃんと2人きりで会いたくて、って言ったら」
「……そんな口実なくても会うのに！」
江口さん可愛いところありますねと笑う犬飼。
「、ダメだよわんちゃん可愛いなんて言っちゃ。
男はみんなオオカミって聞いたことない？」
いつもとは少し違う雰囲気の江口に少々戸惑っていると、彼はずんずんと近付いてくる。
「俺がいつわんちゃんのこと襲うかわかんないよ？」
「………でも、江口さんはそんなことしないでしょ？」
意識せずとも自然と上目遣いになる身長差。
キラキラとした真っ直ぐな瞳に見つめられ、江口はたじろいだ。
その言葉の意味は信頼か、或いは牽制か…
江口以外にも好意を持つ人はたくさんいる。
あの子も、あいつも、みんな。
”好きになるな”という方がきっと難しいのだろう。
だが、気持ちを伝えるのはほんの数人
今の関係性が壊れるのが怖いから。
「嘘だよ(笑)、少女漫画によくあるシチュエーションやってみたくて。怖がらせてごめん」
張り裂けそうな思いに蓋をして逃げてしまう。
「ぁ、えっそうなんですか、めっちゃドキドキしちゃったじゃないですか！」
顔を赤らめ、少し安心したように笑う犬飼は江口の本音に気づいているのかどうかは分からない。
もし、気付いていたとしてもその好意はさらりと避けるくせに、無意識に思わせ振りな態度を取る彼女は本当にずるい。
「、ドキドキしてくれたんだ」
「だって江口さんかっこいいもん」
「……はぁー、また本当にずるいなぁ。」
頭を抱える江口と「何が！？」と騒ぐ犬飼。
いつの間にかいつもの2人だ。
「江口さん、私はお鍋が食べたいです」
「ふはっ、そっか。じゃあ会いてるとき連絡して！美味しい鍋食べよう」
今日も自分の気持ちに気づかないふりをして犬飼を甘やかす。
「わーい！約束ですからね！」と嬉しそうな笑顔をみていると
「あー、やっぱ好きかも…」なんてね、
.
僕の命ならいつでもかけられるのに→←わざと痛めつけた愛のこと
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 782人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：凜 | 作成日時：2022年11月13日 21時
