最上級シンデレラ (ページ45)

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「梅原さーん！」

少し遅れてきた俺にも嫌な顔ひとつせず、ぶんぶんと手を振りながら近づいてくるAは＂わんちゃん＂というあだ名がぴったりなほど犬に見える。

「随分といっぱい買ったようで」

「楽しみだったんですもん、
あ、線香花火は最後に置いときましょうね！」

「おー」

海の近くでやるのが1番夏らしいのだろうけれど、近くに海なんてないからと
2人で待ち合わせした近くの公園。

「私手持ち花火とか高校生ぶりかも」

「元彼と？(笑)」

「違いますよ！(笑)
私アイドル時代は本当に彼氏作ってなかったですよ」

「プロだね〜」

「でしょ？」

そういえば、と。

「髪、…」

"可愛いね"の一言が
なかなか口から出ず

「…何でもない」

誤魔化してしまう。

それも彼女は分かっているようで

「直接は言ってくれないんですか？」と悪戯に笑った。

「……似合ってる、」

「うーん、もうひと声！」

「…………かわいい」

「ふふ、それが聞きたかった！ありがとうございます」

夏が似合う、そんな太陽のような笑顔に胸がドキりと高鳴った。

仕事の話もしながら、たくさんあった花火もついに線香花火だけになる。

「梅原さん勝負しましょ！線香花火！」

「負けたほうが言うこと聞く、な。」

「よし、ぜーったい負けない」

火をつけると先端が玉のようになり、
ジリジリと音を立てる。

「儚いですね、線香花火って」

「綺麗だな」

「私みたいに？」

「うるせー」

「うそですよ(笑)」

たまに当たる肩がもどかしい。

「あ、」

Aの線香花火がぽとりと音をたたず落ちていった。

「負けた！悔しい！！！！」

「俺の言うこと聞いてくれんの？」

「聞ける範囲なら、ね？」

「じゃあ、」

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