二話 ページ4
自然の流れとは思えない枯れるスピードに、驚いているその間にもそのツタは暴れるどころか、また呼んでね、というように軽く俺の拳にツタを乗せると枯れていった。
何がおきている。
ダメだ。さっきも色々おきすぎて頭がこんがらがったのに。目の前でなんかミミズみたいにうじゃうじゃされて、いきなり花束持たされて、もしかしてこれは全部夢で俺の頭が単におかしくなったのか、と思うくらいには困惑していた。
「っ……考えるのは苦手なんだよ…」
男は小さく舌を打つと、また一度深いため息を空中に向けて吐き出した。吐き出した空気は冷気にまみれて視界で分かるほど白くなる。そこでやっとここの気温が低いことに気が付いた。
「うっわ……さぶっ！！」
鼻からたらーっと鼻水が垂れてくる。
まずいな、このまま野宿だと低体温症で死ぬぞ。そう考えられるくらいには頭は正常に働いていることだから。ひとまず、命大事に！という精神で何とか歩いて人を探す。
しかし困った。なにせ場所が悪かったのだ。ここは荒れに荒れた山道、人もいなければ建物もない。山道に入れば大きな熊や動物に食い殺されるだろう。
自身の頭が嚙み潰されるのを想像し、Aはブルリと身体を無意識に震わせた。
ああ、寒い。
一月の高校受験の結果発表の時もこんな寒い日のことだった。しかし、この寒さは異常だ。本能が告げている生命にかかわる寒さだと。謎の植物の次は極寒の寒さかよ、と内心愚痴るがそれどころではない。出来るだけ寒さが防げる木の下で待ってみる。だが、誰も来る気配はない。
「俺、凍死すんのかなぁ…」
段々眠くなってきた中でふと一つ、考えがよぎった。
もしかしてあの植物、歌に反応した……？
枯れたのは俺が歌うのをやめたから？
いやでも、あれただの俺の勘違いってのもあるんじゃないか？
歌ったとしても、生き残れるのか？
そうグダグダ考えているうちに寒さはAの身体を多足類の虫が這いまわるように侵食していった。どっちにしろ、やるしかない。俺の下手くそな歌でも、人通りがいないここじゃあカラオケ状態だ。
先ほどの曲をもう一度歌ってみる。
耳に聞こえるくらいではなく。大きく。
期待も何もせず、Aは小さく口を開く。
薄いくちびるが、すう、と控えめな息を吸う音と共に親友から褒めに褒められた彼の歌声が炸裂した。一般の少年が発しているとは到底思えない歌声にザワっと空気が揺れた。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (
レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです！！！！！！ (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです！ (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねっとり | 作成日時：2022年1月20日 16時
