三十四話 ページ36
気づけば、あちらの様子が垣間見え、息を飲む。学生たちが『吊るされている』。首にツタをかけられ、手足は縛られ、ぴくぴくと痙攣し。天井から水平に身体を吊るされていた。首と、胸と、胴体と、股関節に足首を縄で横に吊るされている。
命令すれば、今すぐにでも殺せる、そんな状態が出来上がっていた。
「殺すなよ」
そう低く零すと同時にシュルルと学生たちの首元のツタが緩み、身体だけを拘束するような形になった。
さて、そう言って俺は視線を前に戻す。
縛られたのは、ジャミルさんも一緒だった、必死に抵抗するも、すぐにまた植物達に取り込まれ、床に拘束されている。
「まさか……、カリムに身体でも売って惚れさせたと思った女が、ここまでやるとはな…」
俺を下からねめつけあげ、低くそう言うジャミルさんに俺は笑って答える。
「私は、踊り子で。芸は売っても身体は売りません」
はっ！と鼻で嗤ったジャミルさんは「どうせお前もアズール達とグルなんだろう？」と自傷気味に言ってくる。
「さぁ？」
俺はそう言って、ジャミルさんの顔の前まで来る。
ジャミルさんの気持ちはよく分からないが、悪いことは悪いことだとしっかり認識してもらう必要がある。俺は彼の口に無理やりあるものを飲ませた。
「ッ！？何を呑ませた？」
「毒ですよ、それも強力のね」
俺は演説するように腕を広げ、口元に笑みを浮かべた。その瞬間、ごほっとジャミルさんの口元から血が噴き出した。
「大丈夫、害のあるものではありませんよ。それは、臓器の血液量を増やすやつです。アズールさんに作って貰いました。もともとは私用だったんですけど。心臓の動きを抑制することができます。しかし一瞬だけ」
「心臓の動きを抑制……」ジャミルんさんが言葉をおうむ返しにすると同時に俺は言葉を続ける。
「狙いは弱体化です。私の魔力でも今のジャミルさんにはかないませんからね。ようは時間稼ぎです。吐血はかなり体力を削るんですよ。このまま、潰れてしまった方が楽なんでいいんですけどね」
ですけれど、とAは瞳に光を灯さず、低く言い張った。
「よくわからないです。貴方、運よくずっとカリムさんの所にいたのなら、小さなころに殺せばよかったのに」
唖然と俺を見るジャミルさんを見下ろしながら俺は口元に笑みを浮かべる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 265人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (
レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです！！！！！！ (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです！ (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねっとり | 作成日時：2022年1月20日 16時
