二十九話 ページ31
俺が向かったのは調理室だ。
人間には『食べられない』食べ物がある。品目はさまざまだが魚介の他にも卵とか他の食材がある。いわゆるアレルギーというやつだ。これは体の自然反射で、もしもカリムさんにアレルギーがある場合、毒と評してアレルギー食材をわざと食事として出す可能性がある。これはあくまでも素人なりの推理だが。
「さて、どいつが副寮長だ?」
影から身体をのぞかせ調理場を見る、中には褐色の肌の学生が多く。全部が副寮長の見た目と被ってしまい。誰が誰か分からない。眉間にシワが寄ると同時に後ろから首根っこを掴まれた。
「なぁにしてんのぉ〜?」
後ろから壁ドンという形でフロイドが俺の腕を縛っていた。
「おい、離せ。俺だ」
と声をかけるとやっと気づいたのか、至近距離で俺の表情をフロイドは見てきた。
「……女かと思ったぁ〜」
いや、メイクしたのお前だろと内心ツッコミをいれると「で?なんでAがここにいるのぉー?」と尋ねられた。
「食事は入れ替わってないか?」
「んー?どういうこと?」
「だから、カリムさんの食事にアレルギーになるものはないか?仮にないとしても毒が入ってる可能性は十分にある」
俺が警戒して厨房を見ると、フロイドがやや不機嫌げに「俺の疑ってんのぉー?」と言ってきた、これ以上は厄介なことになると思い。諦めようとする寸前、
「何やってるんだ?」
と張り詰めた声が聞こえた。
視線を向けるとそこには唖然とした表情のカリムさん。なんでここに?と思うとカルムさんはやや不機嫌気にこちらをじっと見つめてくる。確かに今の状況じゃ、踊り子とフロイドが超至近距離でいるようにしか見えないんだろう。
その様子を見ていたフロイドが何かに気づいたようににぃーと悪い表情を浮かべた。
「……ちょっとA付き合ってね?」
耳元でそう囁かれると同時にグイっと腰を引かれる。一気に距離が近くなり俺がフロイドの胸に飛び込む形になった。反射で逃げようとするが、腰を力強く縫い留められ身動きすらとれない。
どういうつもりだ?と思うと、その様子を見せつけるようにフロイドがカリムさんを見た。
するとカルムさんの顔にブワっと熱が集中し、眉が吊り上がる。そのまま無言でずんずんと近寄ってくると俺の手を力強く引っ張った。
「すまん、借りるぞ」
そう下からフロイドを睨んだカリムに、フロイドは悪戯が成功した子供の様に「どうぞ〜」と俺を離した。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです!!!!!! (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです! (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねっとり | 作成日時:2022年1月20日 16時