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プロローグ ページ1

ヒヒ―ン!!


 猛獣を彷彿とさせる攻撃型の態勢でその黒い馬車は荒野を駆け抜ける。
 爪で地面を力強く蹴り、駆けるその黒い馬は動物にも死神にも見える。



「ちょ、ちょっと。運転荒くない?」


 
 そう小さく零すのは、馬車の室内にいる男。壁にバランスを取るよう手を広げ、顔面蒼白で不安げに御者のいない先頭を見つめている。

 それもそうだ。
 なにせこの馬、急いでどこかに向かっているのか、もの凄い速さで山も川も鋭い茨が生い茂る林も全力疾走で止まらぬ馬である。それ故、地面に転がる石にもぶつかり馬車は大きく揺れる始末である。

 ___いや死ぬ!!どこかに連れて行かされる前に死ぬッ!!


 男は、馬のスピードについていけず酔ったのか、口元を賢明に抑えるが体中から冷や汗が止まらない。ついに耐えきれなかったのか男はここでは吐かぬまい、と窓から顔を乗り出し、口内から押し寄せる汚物を吐き出した。

 少し楽になったのか、はぁと軽い息を放つ。

 さっきまで不安だったのに、吐いたら一気に冷静になってきたぞと遠い目をしていると、口の中がヒリヒリと痛んだ。多分先ほどの胃酸でやられたんだろう。取り合えず、気分を紛わらそう。


 口を開いた。かろうじて自分の耳に聞こえる程度で声を放つ。
 胃酸で荒れた口内から出るかすれた声。
 
 
 誰から見ても、この状態から出せるは歌は良いとは言えない。声はガサガサ、テンポも揺れる馬車によってタイミングも違っている。しかし、耳に深く溶け込むような低音は確かに空気を揺らした。

 その瞬間、ズッ、ズッという力強い何かが地面から盛り上がる。

 ドン!と小石や今までのものと違った衝撃に男の口から歌声が絶たれる。急いで窓から地面を見る。根だ。黒く緑を帯びている根はドンドン地中から盛り上がり生き物のようにうごめく。



「は?」



  すると何かを発見したのか勢いよくその根は俺に向かって伸びてきた。すんでのところで避けるが、その根は知能を持っているのか何なのか馬車の車輪に自身の根を巻き付ける。

「おいおい、嘘だろ」

 嫌な考えが脳内に警報音を鳴らす中、無常にもその根は勢いよく車輪を引き馬車を転倒させた。

 ぐらり。視界が回る。死というものが究極に迫ってくる。薄れゆく視界の中に黒い馬が暴れだしてるのが視えた。薄れゆく景色の中、馬車が壊れる衝撃音と共に俺は冷たい地面に身を投げ出された。

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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです!!!!!! (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです! (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねっとり | 作成日時:2022年1月20日 16時

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