記憶2 ページ2
「それじゃあ、笹原さんは宮の隣な」
「…………は?」
いや、そんなん聞いてないねんけど、……少し というより かなり混乱している中でそんなん言われても困るっちゅーねん。なんて事、言える訳もなく。俺を放って話は勝手に進んでいく。…………そういや、なんで俺の隣に机があるんやろか と思ったけどそういう事か。気付くの遅すぎかよ俺。
けど、まあ なってしまったもんはしょうがない。
「宮…………?」
「ここ、ここやで。"笹原サン"」
そう言ってAにも見えるように手を上げ小さく振ればそれに気付いたのかこっちに向かってくるA。席につく前に「有難うございます」と小さくお辞儀してくれて。相変わらず丁寧やなと思いながら「いーえ」なんて返す。
「…………そういえば、お名前 なんて言うんですか?」
「ん?……あー、宮。」
「宮……?」
「そ、宮。で、下の名前が侑。……所で笹原さん」
「?なんでしょうか?」
これを聞いて、嫌な答えが返ってきたら少し、……というより かなり ショック、やけど。それでも聞いてみな何も始まらへん。小さく息を吸って、吐いて。Aの方をじっ、と見れば口を開く。
「あのさ」
「はい」
「────────俺達、ってどっかで会った事あったっけ?」
俺がそう言えば不思議そうな顔をして「いいえ」と言いながら首を振るA。ずしん、と頭の中に重いものが乗っかったような、そんな感覚。分かっていた、けど、やっぱり辛い。俺は覚えてんのに、なんで、
「…………そっか、やんな。変な質問してごめん」
なんて、────ここから先のことは言えないけど。まだ、君には言われへん。けど、これだけは覚えといてほしい、俺と君は会ったことがある。ずっと ずっと 前から。そして俺は君のことを忘れた事なんて一度も無かった。
でも、やっぱりそんな事言われへんから心の中でも言わせてくれ。
「────……久しぶり、"A"」
続く
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作者名：ねこまる | 作成日時：2018年1月17日 17時
