病弱少女と野球少年

第40話 ページ43

その後、西浦も三星の攻撃もあまり動かずに9番叶君。
なんだかこの子には不思議に思うことが多い。フォークやらバント処理やらその他諸々。
バッティングはどうなんだろうか……。



1球目は一塁側へファール。2球目でサードゴロ。
そこまでは普通だった。


ザァッ


(え！？)


「……ア、アウト！」


ピッチャーがヘッドスライディング！？
あ、焦ってるのかな？この回どうしても塁に出たかった…とか？



ピッチャーは毎回ボールを投げて体力を使う分あんまりそういった簡単に言うと疲れることは避けるはずなんだけど……。それにヘッドスライディングなんて怪我すること多いし。
やっぱり叶君って不思議な子だな。








続いてこちら西浦高校の攻撃は2番沖君。


「ボオッ！」




この試合で初めて1球目がはずれた。
そのままストレートでフォアボール。
やっぱりさっきのヘッドスライディングが効いてる。



その後、阿部君は危なげなく送りバント。
1アウトランナー2塁で4番田島君。


田島君は初球を二遊間に返した。ライトが処理してバックホームするが、その間に沖君がホームへと帰ってきた。


(先取点！！)


「「ナイバッチー！！！」」

「ナイバッチ！」


今度は私も小さい声だけど言えた！



このいい感じの流れで５番花井君。
初球は空振り、しかしキャッチが後ろに逸らしてランナー進塁。そして花井君はレフトフライ。しかしタッチアップで田島君はホームに帰ってきて2点目！
巣山君はストレートのフォアボールで出塁し、三星はタイムをとった。






その間に近くを通った田島君に声をかける。


「田島君！ナイスバッチ！」


「おう！ほら！」

田島君が両手を掲げている。

「ん？」

私はなんだか分からずキョトンとしてしまう。


「なんだよー綾波分からないのかよ！ハイタッチだよほら！」


「あ！あぁ！ハイタッチね！うん！」


パンッと私と田島君は手を合わせた。


田島君はすぐみんなのところに戻ったけど私はじっと自分の両手を見つめた。


(チームメイトとハイタッチ……)



嬉しかった。


本当に些細なことだけどそれでも嬉しかった。このハイタッチだけでもっともっと頑張ろうと思えるくらい。

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