あかーし！！……って呼ばないでください【赤葦京治】

多分過去最高に頑張ってる。 ページ30

赤葦side


「ま、まずは…ここから出てからに、シマセンカ」

「やだ」

俺の腕の中でずっと真っ赤になっているA。
Aを名前で呼ぶことと、敬語をやめることという俺にとって好都合な提案を出てきたから特に問題はない。
俺もそれをどのタイミングで言うか考えてたぐらいだし。

というより好きな人の名前を呼んだり、敬語抜きで話したいと思うのは当たり前でしょ。
Aはこういうところが甘い。


「ほら、早く。告白の返事の時はちゃんと言えたでしょ」

「ぅぅ…ひどぃ」



自分の彼女が☓自分の腕の中で☓顔真っ赤×涙目☓上目遣い

=食べたい


俺が頑張る方程式の完成。


今俺頑張ってる。
多分過去最高に頑張ってる。


うぅ、と唸っていたAが覚悟を決めたように俺をしっかりとした目で見上げる


「け、けん……」

「けん？」

すると恥ずかしさがMAXになったのか、俯いた。


「……かっこよすぎて、むり」

むりぃ……といきなり俺を抱きしめ返す。
抱きしめ返すのに名前を呼べないとは。

と、思ったが、そういえばAは困った時は家にあるぬいぐるみに顔を埋めると言っていた。
俺をぬいぐるみと思っているのか。
まあそこはいいとして、俺をぬいぐるみじゃないとわかった瞬間のAの顔を想像して笑みがこぼれる。

Aは埋めたまま、小さな声で呟いた。


「い、家で、練習……シテキマス」

「うん、待ってるから」


5分後、彼女が俺を抱きしめ返していることに気づくのだが、その時の顔を俺は独り占めした。

糖尿病で死にそうなんだが→←そう、思っていた。

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