あかーし！！……って呼ばないでください【赤葦京治】

壊したのは、俺だ ページ25

赤葦side


追いかけてきたのが木兎さんではなく、俺だとわかると｢ぁ｣と小さく声を漏らし、下を向いた。
それが本田先輩を弱らせてしまっていたことを示していたように見えた。


｢本田先輩、すいません。嫌だと思うんですが、少しだけ俺の話を聞いてくれますか？｣


少しの間を開けて、先輩はこくりと頷いた。






すいません。


あの時俺は怒ってたんじゃないんです。


ただ少しイライラしてて、別に本田先輩が原因じゃないんです。


本田先輩に八つ当たりのように話してしまってすいませんでした。


だから、落ち着いたら、また部活に戻ってきてくれませんか？









｢好きです｣





｢へ？｣

｢あ｣




言おうと思っていた言葉はどこかへ行ってしまい、想いだけが口から零れた。
急いで口を抑える。

本田先輩は驚きのあまり、口を開けていた。


それもそうだろう、俺はただの同じ部活の2年生。

本田先輩は高嶺の花。


一週間に三回も呼び出しをくらうこともあった。
その中には学校でも有名なサッカー部のエースも居たらしい。

それを先輩は、好きな人がいるからと断っていた。


文武両道。

とても綺麗で、


そして、誰よりも優しい。


そんなあの人は高嶺の花。


誰もが求める優しい人。



そんな人に俺なんかが、釣り合うわけがない。


本田先輩はいきなり自分の顔を叩きだした。
しかも三回も。



そして呟いた。


｢夢じゃ、ないんだ｣と。




二度と戻ることはない、先輩と後輩の関係。




それを壊したのは、俺だ。

想いだけ→←部活を、やめる？

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す