並中生徒会長の日常 3 (ページ36)

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並中生徒会長の異常 36 ページ36

骸side

彼らの反応を見る限り、彼女は周囲に幻覚をかけている。
雨を降らせたのは、きっと涙を見させないためでしょう。
彼女の高度な幻覚を見破れるのは、きっと僕だけでしょうけれど。

彼女は泣いていた。

「君は、なんで、そんなに…優しいんだ。」

優しい？
D・スペードの言動は全て優しいとは言い難いものであったはず。
それに対し、D・スペードは「ヌフフフ…」と小さく笑っていた。

「貴方が、しつこかったからでしょう。」

「でも、幻覚世界で聞こえたよ。…自分の代わりに、生きてくれって。」

「！！」

D・スペードが「貴方は単純ですね…」と力なくAの頭を撫でる。
それにAは涙を流していた。

「『死にたい』なんて…『消えたい』なんて…傲慢もいいところなのに。……なんで、見捨てなかったの。」

その言葉に驚くも、D・スペードは今まで見たことのないほど優しい笑みでA手に自分の手を重ねた。

「…貴方が思うほど、この世界も…悪くありません。」

「でもっ…君は、『夜の炎』を手に入れるほどにっ……『絶望していた』じゃないかっ…！！」

「ヌフフフ…それは、貴方もでしょう…？」

黒い炎。
その本当の名前は『夜の炎』。
そして、取得条件は……『絶望』。
しかしAが「違う。」と口を開く。

「ボクのは…純粋な、『殺意』だよ。…スペードくんみたいに、綺麗じゃない。」

殺意。
その言葉に驚くも、「ですが、」と話を続ける。

「貴方の罪は、罪ではありません。」

「…罪だよ。」

「…それでも、罪と……呼ぶのなら…『罪を背負い、生きていきなさい。』……愛する者と共に…『私と、エレナの…代わりに』…」

Aの生死を、生への希望を持たせたものがD・スペードというなんとも喜び難い結果に眉をひそめる。
Aは話し始める。

「お前がやったことは、許されるものじゃない。」

「……」

「けれど、君が迷惑をかけてきたすべての人たちに謝り、待たせている愛する者と再開できたのならば……ボクは君を『理解者』としてボクの精神世界へ案内しよう。」

「正気ですか。」と話すD・スペードに対し、「ボクは正気だよ。」と『いつものように』返すA。

「苦すぎるコーヒーでも入れてあげようか。」

「嫌がらせですか。」

「そうもしなければ、君たち、スペードくんとエレナくんのノロケ話も聞けないだろう。」

D・スペードは「そうですね。」と笑うと消えた。