俺らの幼なじみは姉じゃない (ページ49)

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番外編【姉じゃない、みんなのお姉ちゃん4】ページ49

黒尾side

初めて見たのは外を車椅子で移動していたところ。

しばらく経って見たのは、二階の窓から空しか見ないところ。

その目が深い『悲しみ』『苦しみ』『妬み』に溢れていたこと。
それがどうしても頭から離れなかった。

「だから会わせてくれって言った。けど会わせてくれないから、ちょっと登って無理やり会いに行った。」

「だろうな？こっちはすげぇヒヤヒヤしたしな？」

『もう二度とするなよ？』と目で言うも、「やる必要がなければやらない。」と言葉で返された。

「そんで、直接聞いた。…重い病気なんだってさ。手術するにも難しくて、やってくれるところはどこにもなかった。
…でもようやく手術してくれる病院見つかってさ。近いうちそっち行くって前聞いた。だから、最後のお話してきたってこと。」

「木の枝は？」

「もう二度とここからお姫様に会いに行かない、っていう意思表示と…お別れ。」

Aの言葉に柴山が話す。

「別に…お別れしなくても……その、よかったんじゃないですか。治して…それで、また……。」

「簡単に治療出来るもんならやってるよ。…残念だけど、完治は今の医療じゃ無理だ。」

「で、でも…！」

「だから、約束してきた。」

自信満々なその姿に「何を？」と聞く。
Aは笑顔で言った。

「『今度会ったら酒奢れ。』って。」

「さっきまでのセンチメンタルどこ行った！？」

切なさも感動も消失したぞ！？
Aはぼーっと空を見ながら話す。

「…成功する確率の方が低いから、死ぬんじゃないかって、いっつも言ってんの。だから『約束』。

絶対手術成功させて、普通の生活できるまで病気を落ち着かせて、そんで私に酒奢れって。1年2年で治るやつじゃないから、私たちが大人になって、また会ったら酒奢れって。

私性格悪いからさ、アイツが泣いてばっかりだったこと、笑い話にしてやんの。」

笑いながら話すAはそいつが治ることを信じて疑わなくて。
「もし今度入る時は玄関からだから、あの枝も要らないしね。」とAはゆっくりと語る。

「私は優しくないからさ、人の涙も笑い話にしたいんだよ。」

「…お前…本当にひねくれてんな？」

「よく言われるし、そういう性分だから。」

結局は優しいってことに気づかない、そんなとこもひねくれてるんだよなぁ。

「アイツは約束は破らない、から大丈夫だよ。」

俺らに笑いかけるように話すその姿が、少しだけ大人びて見えた。