俺らの幼なじみは姉じゃない (ページ48)

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番外編【姉じゃない、みんなのお姉ちゃん3】ページ48

黒尾side

しかしまあ、着いてくるなと言われて、ついて行かないのは小学生まで。
もちろん俺らはこっそり、Aをよく知る研磨を先頭にして後に着いてった。

「お姫様って何？すげぇ美人とか？」

「でも自分のこと王子様って言ってたし、相手が男の子かもしれないですね！」

「おら、遠足じゃねぇんだぞ。しっかりしろ。」

「それ普通尾行に使わないよね？」

海の一言に少しの後ろめたさが生まれたが、ほっとく。
気にしたら負けだ。

「着いたみたい。」と研磨が声を潜めて話す。

Aがひとつの木を見上げていた。

近くにあった石を足場にして木の枝に足をかける。
そして少し木登りすると、木の枝から小さな屋根に登って……。

叫びそうになったが、研磨に口を塞がれる。

「今声で驚いた方が逆に危ない。足滑らせたりとか。」

研磨の言葉に大人しくすることにした。

その後も屋根から別の屋根へ、そしてある家の窓に手を付けた。

窓から現れたのはひとりの少年。
中学生ぐらいの身長だ。

Aは少年と話す。
少年は静かに微笑む。
少年がAに抱きつく。

「んな！？」

それをAは受け入れて、こどもをあやす様に背中を叩いていた。

手を振り、Aはさっきと同じように帰る。
しかしその道中ひとつ、またひとつと、自分が使った木の枝を数箇所折っていた。

無事地面に足が着いたAが少年に声を張る。

「絶対約束守れよ！！…絶対だからな！！」

少年は泣きながら笑い、何度も頷いていた。

・
・

「よお。」

「……研磨か。」

何故俺らがここまで着いてこられたのかを考えついたのだろう、研磨にじとーっとした目を向ける。
研磨は完全にそっぽを向いていたが。

「で、あれがお前のお姫様？」

「そうだけど、何。」

盗み見されていたことが不満そうで、口調が少し荒い。
色々気になっていることもあったけれど、何故か口を開いてはいけない気がした。

「コソコソ着いてきたと思ったら今度はお通夜か！なんで静かになってんの！？こっちが困る！！」

「えーと、いや…その…デスネ……。」

言い淀む俺にAはため息を着くと、そこにあったベンチへ座らせた。
『話してやるから黙って座れ。』という意味だ。

「そろそろうざったくなってきたから話すけど、いい？」

静かに頷く。
そしてAは口を開く。

「アイツ、あと半年もしないで死ぬんだ。」

それは俺らを黙らせるには十分な言葉だった。