姉じゃない44 ページ45
黒尾side
俺の膝の上で『強制幼児化』をさせたのは初めてだった。
本当なら自分の口から聞きたい。
けどAは隠すのが上手いから。
自分の心を殺してでも隠すから。
「うぇぇぇぇぇぇん!!!」といつものように泣き出したAの背中をぽんぽんする。
座らせた途端に泣き出すのは初めてだった。
流石研磨、と思いつつも、昨日読み終えた小説が頭から離れない。
「…ひっぐ…やだ…やだぁ!!」
「何が嫌なの?にぃにに教えて?」
「……や。」
「なんで!?」
初めての拒否に驚きとショックを受ける。
「にぃ…めー、わく……ポイ。…もう、や……。さびしー……やぁぁぁぁ!!!」
あの時、Aを家族じゃないと言ったことがかなり深く残っていたことに、またショックを受ける。
本当にショックを受けたのはAの方だとわかっていても、それでもだ。
「本当にごめん。…にぃにが悪かった。でも、もうにぃに、あんなこと言わない。だってにぃにAの家族だから。」
「かぞく、だめ…おはなし……。」
「もう二度と言わない!Aと約束する!」
「…やくそく…いー。」
また拒否られてショックを受けていると、ジャージが握りしめられた。
「にぃ…いるなら、やくそく…いー。」
「……うん。いる、ずっと。」
静かに頭を撫でると、嬉しそうに目を細めるA。
「なあ、Aは何が嫌なんだ?」
「……Aね、けいさんにね…ひどい…いっぱい、おはなし、したっ…。A、ちちうえさまと…おんなじ……イヤ。ことば、も…はたくも…いたいも……やだ…。こわいっ……やだぁ!!」
心の底からアイツみたいになりたくない。
人を言葉でも暴力でも傷つけたくない。
そんなことを心から思ってるコイツがそんなのになるわけねぇのに。
「あのな。」となるべく優しく声をかける。
「にぃに、Aがそんな人になるなんて信じない。すっごい優しいって信じてる。」
「……ひどい…いっぱい…。」
「にぃにがずっと信じてあげる。…それじゃあダメか?」
「ん。」と頑張って返事をしようとする姿があまりに愛おしくて。
Aは、話さなきゃいけない事がなくなり、緊張が無くなってうとうとし始めた。
そして小さな背中をぽんぽんすると、直ぐに眠りについた。
「今回の言い訳は…溶けたまま寝た、ってことにしとくか。」
腕の中でこどもが眠りにつくと、俺は起きた時のAへの言い訳を考えるのだった。
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作者名:ドク | 作成日時:2022年8月24日 18時