俺らの幼なじみは姉じゃない (ページ43)

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姉じゃない42 ページ43

研磨side

思った通り、クロが話に入ってくる。

「情けないからコソコソしてたんだけど。ちょっと他所行っててよ。」

「ちょっと〜！そんなことしたら鉄子ちゃん泣いちゃうよ〜！！いいの〜？」

「「どうでもいいよ。」」

「返しがひどいっ！！」

いつものような会話をしてるけど、Aは確実にクロが『この話』について知っているということに気づいている。
Aは少し深呼吸をすると、「鉄にぃ。」とクロを呼ぶ。

「まだ、私の中でも…整理がついてない。だから、話せる状態じゃ、ない。…でも、話すから。……話せる状態でも、そうじゃなくても…ちゃんと話すから。もう少し、もう少しだけ…待って。」

「……わぁったよ。」

クロはAの頭をポンポンと叩くと、俺らから少し離れた。
クロと話す間、ずっと俺の制服を掴んでいたのはきっと無意識だろう。

『自分の弱さを話す』

それはAの苦手なもののひとつだから。

「きっと、きっと……大丈夫、だから。」

無理して笑ってるのなんて、俺には隠せないのに。
「……震えてるけど。」と話すと、「武者震い。」として頑固に認めない。
怖いものは怖いでいいのに。

嫌なものは嫌と言っていいのに。

最初の話に戻り、Aが何かを言おうとするのを俺が遮る。

「さっきの。…かっこわるいも、情けないも、全部Aが思ってるだけで、俺はかっこわるいとか思わないから。」

そう言うとAは何も『言えず』に顔を赤くしたのだった。

これは、すごく嬉しくて、喜んでるけど、恥ずかしいって思ってるやつ。

「クロ待ってるよ。」と声をかけると、Aは「うん！」と元気よく返事をした。

クロと話してから、ずっと俺の制服をつまんでるのは、内緒にしといてあげる。

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「…これ、明日から読むから。」

「……え？？」

クロを家に呼び、渡したのは御録研次郎の新作。
そして、ふたつでひとつの作品。

『鏡城のおとぎ話』と『鏡上の舞踏会』。

「クロは小説読むの下手くそだから俺が教える。」

「てかなんで俺が小説読むことになってんの〜？？」

戸惑うクロ。
でも仕方ないことだから。

「…本人は自覚ないけど…小説は、文字は、Aの感情をそのまま隠しもせずにぶつけるものだから。

だから、Aの『本心』を知るのは上手く心を隠される会話より、文字の方がいい。」

そう言うとクロは大人しく本を受け取った。