俺らの幼なじみは姉じゃない (ページ41)

今日:16 hit、昨日:53 hit、合計:24,247 hit

姉じゃない40 ページ41

黒尾side

「部活始まるのに研磨もAも居なくて、こっちはほんと焦ったんだからな！？」

「あー、うん。」

「……。」

「研磨、その子を甘やかさないの！」

いつまでも研磨がAをおんぶしているから中々起きない。
ベットや布団なら直ぐ起きる俺らの声にも無反応だったし、完全熟睡と見えた。
研磨が「あの、さ。」と話す。

「その、全部…ごめん。でも、Aはもう少し、寝かせてあげて。……ただ、泣き疲れてるだけだから。」

「泣き疲れて…？」

研磨の様子から、というより元々研磨はAに怒らないし、ケンカもAが研磨を不機嫌にさせたり怒らせるだけだから、俺らみたいに口論はしない。
なら、なんで？

「クロ。今日はちゃんと、眠らせてあげたいから…部活休む。……後で来てね。」

それが後で研磨の家に『話を聞きに』来てねという意味だとわかった。
俺は静かに「わかった。」と返した。

・
・
・

「……は？」

聞いたのは、Aが烏野の監督に言った言葉をきっかけに、自分がアイツみたいな酷い人間にならないかという、『不安』と『恐怖』。

ベットで横にさせて、膝枕をしている研磨は優しくAの汗を拭く。
Aは、魘されていた。

「…ずっと、怖かったんだって。……泣きながら震えて、最低は私、本当のクズも私、なんて有り得もないこと言っちゃってさ。

本当に……耐えきれなかったんだと思う。

Aは感情を殺して、俺らに隠すからAが本気で隠そうとしたことは俺らにはわからない。
……でも、それが出来ないぐらいの…外に、誰かに伝えなきゃいけないぐらい、殺しきれないぐらいの感情だったってこと。」

それだけの、大きな感情と罪悪感をAは前の父親と比べてしまい、魘されているという。
俺らだって驚いている。
だって、俺らと寝る時に魘されるなんてことはなかったから。

いや、逆なのかもしれない。

俺らと寝る時『だから』魘される、ありのままの自分を出せるのかもしれない。

Aの目から涙が零れる。
それを研磨が優しくハンカチで拭き取った。

「だから、クロ。怒るのは後でいくらでもできる。…だから、それは今じゃない。」

それは暗に『怒らないで。』と言っているようなもので。
きっとその言葉がなければ、俺は怒っていたと思う。

なんでひとりで抱え込んでいた、と。

俺は絞り出すように「……わかった。」と声を出した。