姉じゃない39 ページ40
研磨side
「先に断言しとくけど、Aはその父上様と同じ、酷い人にならない。絶対に。」
「…絶対、なんて…ありえない。」
「かもしれない。でも俺らは絶対ないって、信じてる。それでももし、信用出来なかったら…俺らがAがそうならないように教えてあげる。支えてあげる。」
俺の言葉にAが恐る恐る顔をあげる。
身体の震えはなかったが、涙は止まっていなかった。
「……めい、わく…かける…。」
「今さら。それにクロの方が迷惑。その日の気分で朝早く来るのやめてくれない?困るんだけど。」
「でも…でも…。」と否定を続けるAを抱き上げると、ふにゃっと身体から力が抜けた。
しかし涙腺も緩くなったのか、「ひっ……ひっぐ…。」と泣き始めた。
どうやら幼くなったようで、俺に抱きつき、制服を握りしめる。
「こわ、い…こわいよ、けん…。」
「クロ居ない時狙ったよね。なんでクロが居ない方がいいの?」
「にー…ぷんぷん、する…。にー、ぷんぷん…させたく、ない…かなしー…させ、たく…ない。……けん、やさしー…。……ゆっ、くり……きーて、くれる…。」
「……そっか、Aは優しいね。」
確かにクロが居たら、『Aはそんなこと絶対しねぇ!!』って怒ったり、それにつられて悲しい、悔しいと思うかもしれない。
その判断は正しかったと思う。
でもね。
「きっとクロもAのお話聞きたいと思うよ。」
「…なん、で?これ、たのしー、じゃ、ない…のに。」
ようやく止まった涙が再び溢れそうになり、優しく背中をトントンと叩く。
「クロもね、Aのこと心配したいと思うよ。Aのは正しい判断だけど、俺からゆっくりお話してもいい?」
Aはこくりと小さく頷いた。
涙も止まり、完全脱力となっているAの頭を撫でる。
起きているのも限界そうだった。
「けん、ねむ…ねむ…。」
「…うん。おやすみ、A。」
健やかな寝息を聞く。
そして俺もいつの間にか眠っていたと気づいたのは、クロから電話が来てからだった。
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作者名:ドク | 作成日時:2022年8月24日 18時