俺らの幼なじみは姉じゃない (ページ29)

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姉じゃない28 ページ29

黒尾side

眠ったままのAをおんぶして学校へ向かう。
床へ下ろし、監督の話しを聞いていると、「…にぃ…けん…。」という声と、泣いているであろう「ひっぐ…」という声が聞こえたので、特別にAを俺が抱っこするという形で話を聞くことになった。

泣き止むAに、抱っこする俺。

監督は微笑ましそうに俺らのことを見ていたことに気づかなかった。

・
・

「A。」

その一言で、目を擦りながらAは身体を起こす。
その姿に満足しながらも、これから説教するということを思い出す。

「にぃ…？けん…？」

「うん。ここ俺の部屋。」

Aが周りを見ると、研磨の部屋だとわかったようで。
これでようやく本題に入れる。

「お前なぁ…スマホはなくすし、知らな」

「うぇぇぇぇぇぇん！！！！」

「「！！？？」」

いきなりの幼児化に俺らが驚く。
研磨が俺の事を見てるけど、本当に何もしてないし、怒ってもいないし！！
Aが俺と研磨の手を掴む。

「さび、さびし！！やだ！！ふたりといっしょじゃないとやだぁ！！やぁだぁ！！さびしぃはいやぁ！！」

ふたりで近くに寄ると、俺らを抱きしめようとした。
けど身体が小さすぎて、ふたり合わせても腕が限界だったらしい。

「いたい、より…くるしー、より…いや、より……さびしーが…かなしー…。」

だから走ってきたりするのか、と納得する。
「わた、し…おねーちゃ、やだ…。」と顔を俯いたままのAが話す。

「なんで？A兄弟欲しいって言ってたじゃん。」

「おねーちゃ…ずっと、ひとり…。きよこ、おねーちゃ……ひと、り…。あったか…じゃない…。」

「だからずっとおんぶされてたの？」

研磨の声に小さく頷くA。
お姉ちゃんは寒くて寂しい、ねぇ。

「お姉ちゃんになっても俺らはずっといるよ。ねえ、クロ。」

「おう。当たり前だろ。」

「…ほんと？」

「本当。」

「じゃあ、わた、し…なんでも、いい…。さびしー、ないなら…なんでも、いー。」

そう言って俺らの『末っ子』は腕を掴んだまま眠りに着いたのだった。

「本当、甘えん坊さんだね。」

「困ったぐらいにな。」

静かにAの頭を撫でる。
すやすやと眠るAをベットに置くと、俺は敷布団を取りに行ったのだった。

「…困ったって言ってる割にはクロ、いつも笑ってるのにね。」

静かに笑う研磨。
研磨の独り言は誰にも聞かれることはなかった。