僕たちの恋。_JW

考えた結果 / りゅかみ ページ31

神ちゃんが、記憶を失った。いや、しげのことだけを、さっぱり忘れてしまった。



｢…ほんまに、わからんの？｣


｢おん。ただ、あの人を見ると胸が痛くなんねん。なんでなんやろ…｣


｢…そっか｣



なんて相談を受けた。
他のメンバーは覚えとるのに、しげのことだけ忘れとるらしい。

それ程、しげに対して拒否反応がでとるんやな。昨日しげに呼び出されて何かあったに違いないのはわかるが、聞こうにも聞けず。



｢流星…｣


突然肩に重みがかかって横を見れば神ちゃんが俺の肩に頭を預けて甘えるように俺の名前を呼ぶ。

そのとき遠くから感じた視線に目を向ければ、望がちょうどこっちを見とって、目を合わせないようにすぐ神ちゃんに目線を戻す。

もう一度ゆっくり見ればこっちはもう見とらんくて、ちょうどしげと何か話しとった。



｢はあ…｣


昨日を思い出して思わず出るため息。あの時は苛苛してたのもあって、『別れよう』なんて咄嗟に言うてしもうたけど、そんな気はさらさらなかった。

ただただ後悔しとる。


けど、隣にいる神ちゃんをほっとけないのも確かで、ほんまに俺って自分で言うのもなんやけど、物凄くやなヤツだと思う。


そんなことをかんがえてたらいつのまにかしげが目の前に立っとった。それに神ちゃんも気づいたのか俺の服の裾を掴んで小刻みに震え出す。

これ以上、しげと関わらせたら神ちゃんがどうなるかわからんし、とりあえず抱きしめた。そしたらまあ、しげもご立腹。



｢神ちゃん、しげのこと、覚えてないんやで｣


そう告げれば、今にも殴りかかってきそうだったしげの顔が切なく歪んだ。でも、反応が薄いってことは、知っとるんか。



ごめんな、しげ、

こんな状態の神ちゃんをほっとけへん。



まだ心のどこかで望を愛してた自分を隠して、神ちゃんを愛すことを決めた。


これでよかったんよな？




_______

つづきます
(スランプスランプ)

写真 / ふじこた→←記憶障害 / しげかみ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す