【マダラカルト】あなたの声が聞きたくて【烏衣】 ページ2
幼い頃から一定のリズムを刻むものが好きだった。
音楽は勿論、誰かの足音や鐘の音も好きだ。会話する声も、衣擦れの音も。
それでも一番好きなのは“心拍の音”かもしれない。
真夜中。月が黒い空で輝く時間。隣の壱号のベッドにそっと潜り込んだ。
んー、と壱号が呻く。しかし起きる気配はない。壱号の背中に腕を回し、弐号は額を壱号の胸に当てた。
とくん、とくん、心拍の音が額に響いてくる。この振動に近い音が大好きだ。弐号は幼少の頃には、自分とは違う間隔で脈打つその音に快感のようなものを感じているということに気づいていた。
もそもそと壱号が動く。眉間に軽くシワを寄せて、弐号は壱号を抱く腕を解いた。彼が目を覚ましてしまえば心拍を聴くことができない。
衣擦れの音と共に壱号が寝返りを打つのを眺める。自分に背中を向けた壱号に不満げな視線を投げてから、弐号は溜め息をついた。
ふと、窓際に飾られた花瓶が目に入った。花瓶を置いたのは科学者で、生けられた花はキイジョウロウホトトギスとか言う花だった気がする。
ああ、彼はその花の花言葉も言っていたな。確か……
「……『あなたの声が聞きたくて』だっけ……」
ぼそっと呟く。その声が耳に入ったのだろうか、壱号がまた呻いた。
もう戻らないといけないのか、なんて思いながら弐号はそっと壱号のベッドから離れた。自分のベッドに腰掛けて壱号を見やる。
壱号は、小さく呻きながらこう言った。
「…………に、ごう……」
掠れ気味の低い声。小さなその声を耳にした瞬間、弐号は全身に痺れたような刺激が走った。
「……科学者さんって、タイミングいいよね」
一人、ぼやく。窓際の花に一瞬視線を向けてから真っ直ぐに壱号を見た。
あなたの声が聞きたくなった。だからこんな真夜中に起こしてしまった。
重い瞼を開けて怪訝な顔をする壱号に、弐号はそう言ってから抱きついた。
〜〜〜〜〜
花言葉とアコースティッコフィリア(音響愛好)を織り交ぜようとした結果、よくわからないものができました。
トップバッターがこんなので申し訳ありませんm(__)m
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