■しっと ページ32
side Juri
なんだか最近胸がざわつく。
相変わらずAとの仲は良好だと思ってる。
喧嘩する事もないし、Aだっていつも通りだ。
だけど、明らかにAの周りが変化し出してた。
YouTubeをさせてもらうようになって、
一気にAの人気は上がっていった。
アンチも減って、あの頃のように
悲しく笑うような事も減ったと思う。
本当のAの笑顔を、魅力を、周りが理解し始めて…
いいことだって頭でわかってる。
でも、胸にかかった靄はどんどんと濃くなっていく。
桃「樹！じゅーり？」
樹「え、あ、A？悪りぃ…どした？」
桃「どうしたのはこっちの台詞！
次、樹の番だよ？スタッフさん呼んでる！
…どっか具合でも悪いの？」
樹「ははっ、違う違う！ちょっと眠いだけ！
いってくるな、ありがとA」
そういって笑いかけて、Aの頭を撫でる。
くすぐったそうにはにかむAが、
まっすぐに俺を見ている。
どうしようもないくらい愛おしい。
そんなことを考える、視線のその先で…
つまんなそうにふてくされるきょも。
そして
一瞬チラッとこっちをみて本に
視線を落とす、北斗。
俺さ、そんな鈍感じゃないから気付くんだよ。
ざわっ。
また靄が濃くなる。
桃「今日、飲んでくるね〜」
樹「え、誰と？」
桃「葵ちゃんとお兄ぃだよ？」
樹「他にも誰か来たりしねーの？」
桃「う、うん…多分？」
樹「日付変わる前にお開きにしてな。
終わったら連絡して、迎えに行くから」
桃「だいじょ」
樹「俺が心配だから、A、ね？」
桃「わかった…」
傍に居ない日は不安で仕方ない。
俺の目の届く場所に居ない時、
誰かに声をかけられているんじゃないか。
あの笑顔が俺じゃないやつに向けられている。
そう思うと、どんどん濁った汚い気持ちが
湧き上がってきて、イライラが募ってくる。
Aを疑う訳がない。
そう、これは俺が幼稚なだけ。
カッコ悪い嫉妬に狂ってるだけ…
わかっているのに、止めらんねぇんだよ…
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作者名：ももじゅり | 作成日時：2020年10月17日 2時
