【文スト】ヨ コ ハ マ 崩 壊

22話 ページ25

…あれから、自力でなんとか部屋に帰り、森からの返事を待つ。




…結局、中也には逢え無かったな。



残念だ。








………残念？


残念なんて、まるで恋する乙女の様じゃないか。





否、無いな。出逢って数日だし、大した会話も交わしていない。



きっと、あの整った美しい顔を見ることが出来なかったことについての『残念』だな。







考え事をしていると、不意にノック音が響く。



ドアを開け、ノックの主を確認する。





「よぉ、黒岩。此れ、首領からの手紙だ。」


「…！」







ドアを開けると、あの美しい青年……中也が立っていた。





「嗚呼、有難う。」


「善く解ンねぇが黒岩も大変だな。頑張れよ。」




凡そマフィアらしからぬ爽やかな笑みを浮かべる中也。


その様子を見て思わず私も口元が緩む。





「ふふっ。精々殺されないよう頑張るとするよ。」

「…！黒岩、手前そんな風に笑えるンだな。」





失礼な。私は何時だって笑顔だろうが。



まぁ…褒め言葉として受け取っておくか。






「何だ、それ褒めてるのか？…あ、『黒岩』はよしてくれ。くすぐったい。涙香で構わない。」



「お、おお…？じゃあ……涙香。」


「嗚呼、それが落ち着く。」


「そーかそーか。…あ、やべぇ、遅れちまう…じゃあな、涙香。おやすみ。」




中也におやすみ、と返してドアを締める。




長い間引き止めてしまって悪かったな、なんて思いながらクイとワインを飲む。






明日からのことについて、そろそろ考え無いと。





頭では分かっているが、中也が頭を回って上手く考え事が出来ない。





……もう少し、あの美しい青年の余韻に浸ってから仕事を始めるとするか…。







夜はまだまだ、深まっていく

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