9話 ページ12
太宰の言葉を聞いた途端彼女はカッとなり、太宰に飛びかかる。
鋭いヒレが喉笛に当たり、異能が解除される。
「ﾁｯ…太宰。貴方だけは、何時か私が息の根を止めてあげる。」
舌打ちをした後に、再び異能を発動して目にも留まらぬ速さで去っていく林。
…「子供が死んだ事は変わらない」か。
私なら、変えられるかもしれないな…
そんな事を考えながら太宰へ近寄る。
「悪かったね、昔の知り合いだ。」
「馬鹿かお前は。あんなに挑発する必要は無かっただろうが。」
あいつと何があったんだ？という好奇心の無粋な質問を抑え込む。
知りたいのはやまやまだが知られたくないことの1つくらいあるだろう。
太宰はクスリと笑い、私の手を握った。
太宰の真面目な顔に私も脳内を一旦中止する。
「…涙香。頑張って呉れ給え。期待している、と云うと重荷になるかい？」
「いいや、大丈夫だ。大いに期待してくれ。必ず明るい未来を創り出してみせる。」
「…ふふ、それでこそ、涙香だ。」
嗚呼、と頷きにっこりと笑い森の方を向く。
太宰も私の視線の先を追うように森を見る。
「…おや、話は終わったのかい？年寄りは置いてけぼりで少し寂しかったのだけれど。」
少しいじけたような顔をして立ち上がる森。
…確かに全く会話に入ってこなかったな。
置いてけぼりにして悪かったな、と反省。
太宰がへらっと笑いながら森に謝っている。
……こんな状況ですらこいつらと離れるのが辛いと思ってしまう。
やらねばいけないことがあるのに、此方へまだ残っていたいと思ってしまう自分がいる。
然し…それじゃあ駄目なんだ。
私は息を大きく吸い込んだ。
「…私はそろそろ、本当に過去へ行く。…もう、此方でやり残した事はないよな？」
2人を交互に見ながら堂々と喋り出す。
2人は話すのを止めて私の方を向き、小さく頷く。
「…そうか。」
くるりと背を向け瓦礫の山のてっぺんまで歩く
その行動に意味なんてない。
然し、やらずにはいられなかった。
「私は今から過去へ戻る。そして、銀の匙の陰謀を防ぎ、必ず私の愛していたヨコハマへ戻す。…太宰、森、行ってきます。」
「…いってらっしゃい。」
二人の声が重なる。
私は微笑み、深く深呼吸をする。
「…異能力─天人論─」
体の包まれる感覚。
今、私は過去へ戻っている。
「…二人共、大好きだ。」
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
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まるてん(プロフ) - 鯖の味噌煮さん» こちらこそコメントありがとうございます。更新出来ると言いつつ遅くなってしまい申し訳ありませんT_T この作品を好きでいてくれる方がいるのだと実感でき本当に励まされます。ぜひこれからも読んで頂けると幸いです…！ (2021年7月15日 12時) (
レス) id: 1c66422c77 (このIDを非表示/違反報告)
鯖の味噌煮(プロフ) - 更新ありがとう御座います！本当に素敵な作品ですのでどうか無理なさらずお書き下さい。いつまでも気長に楽しみにしております！ (2021年7月15日 0時) (レス) id: 2d6934bde3 (このIDを非表示/違反報告)
まるてん(プロフ) - 鯖の味噌煮さん» わ！この作品を好きでいてくれる方がいてとても嬉しいです…！コメントとても励みになります！更新頑張ります、ありがとございました！ (2021年3月10日 10時) (レス) id: 1c66422c77 (このIDを非表示/違反報告)
鯖の味噌煮(プロフ) - お気に入りに入れ何度も読み返していたのでとても嬉しいです！！更新楽しみにしています！ (2021年3月10日 8時) (レス) id: 2d6934bde3 (このIDを非表示/違反報告)
まるてん(プロフ) - からすさん» あ、そうです…！そこに気付いて貰えて嬉しいです…！有難うございます。からすさんも、体調にお気を付けて…！ (2018年1月12日 23時) (レス) id: 00d4fdc1e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるてん x他2人 | 作成日時：2017年8月3日 15時
