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「いいじゃないですか。困ってるのは事実なんですし」
「もったいないアルな。そんなホワイト企業がおジャンになったなんて」
「ありがとうございます…」
「こんなブラック企業もありますしね」
「給料全然払ってくれないアルからな」
「テメーら客の前でなんつーこと言うんだよ!」
「あはは…無理言ってごめんなさい、坂田さん」
「あー銀さんでいいよ。硬っ苦しいの嫌いなの俺」
坂田さん─銀さんの他にいた従業員の2人は優しく話を聞いてくれて、丁寧にお茶と軽いお菓子を差し出してくれた。彼らも若いのにちゃんと働いてて素晴らしい。
「でもよォ、なんでうちに来たワケ?そりゃお金さえ払えばなんでもするけど絶対満足行く職場があるとは限らねェよ?」
「…はい、分かってます」
気が引けたのは職業安定所に行けば、必ず親の承諾がいるとか書類がいるとか、なんやらかんやらが重なって面倒になりそうだったから。どうしても親に心配かけなくなかった。
「…親孝行ねェ」
「立派ですね。そんなに無理しなくても、もう十分親孝行できてると思いますよ」
「そうアルよ。真面目すぎアル」
どこかで聞いたその言葉に再び苦笑いを零した。気だるそうに聞いていた銀さんが組んでいた足を外して私を見つめる。
「親っつーもんは子供が元気に生きてればそれ以上は何も望まねェよ。娘なら尚更。一番できる親孝行なら普通に結婚して孫の顔見せてやることだと俺は思うがねェ」
なんだか昨日から投げかけられることばが全て聞いたことあるものだ。この歳になるとそんなに働くだけの人生はとがまれるのか。少し傷つきながら銀さんの言葉を噛み締める。結婚かぁ。考えたこともなかったなぁ。
「ま、頼まれたもんはきっちりやらせてもらうが、あんまり考えすぎんなよ」
頭を下げて万事屋さんを後にした。昨日と今日の言葉がずっと脳内を駆け巡る。恋愛、結婚。それが親孝行。ずっと仕事ばかり過ごしてきた私には無理な話だ。いいじゃないか。そんな人生でも。私に不満は無いのだから。
「ただいま」
「あらおかえりA」
母がニコリと笑って出迎えてくれた。いつも通り、家族3人で夕食を食べる。そうだ。私は今で幸せだ。
「2人とも心配しないでね、次の就職先も決まりそうだから」
「もうお金のことなんていいのに」
「そうだぞ。そんなことよりお前」
「そろそろ結婚しないの?」
絶対に私には無いと思っていたことが突然人生に舞い込んできた。
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尾っぽ(プロフ) - ままさん» 更新頑張ります!! (8月22日 21時) (レス) @page31 id: 96e7b68837 (このIDを非表示/違反報告)
まま - つづきを!! (2023年4月13日 22時) (レス) @page27 id: 21c8ee624a (このIDを非表示/違反報告)
尾っぽ(プロフ) - かっちさん» コメントありがとうございます!原作の沖田くんが好きなので笑自由奔放な沖田くんに振り回される夢主ちゃんが可愛いですよね笑更新頑張りますね^^ (2023年3月5日 8時) (レス) id: 96e7b68837 (このIDを非表示/違反報告)
かっち(プロフ) - この作品大好きです!!特に夢主ちゃんが可愛くて……!沖田君もキャラ崩壊一切無くて、カッコいいですね!更新待ってます。 (2023年3月4日 14時) (レス) id: 1b6cbbdaba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:尾っぽ | 作成日時:2023年2月17日 20時