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それは私が想像していた何倍も充実した時間だった。どこに連れて行ってくれるのかと思えば、最近できた茶屋とか、映画とか雑貨屋で、私が全く知らないところばかり。
特別なことなんて何もしていない。それでも十分楽しい時間だった。
一通り満喫して今は散歩みたいに川沿いを歩いているけれど、隣の沖田くんはいつもみたいに表情は変えず、両袖に手を入れて前を見ていた。
「本当にどこも無いんですかぃ」
「はい。とっても満喫しました」
「そりゃよかった」
「ありがとうございます」
基本的には表情を崩すこともないし、感情を表に出すタイプではない。そんなことは分かっている。けれど、彼を知りたいという気持ちは日に日に強くなるし、沖田くんの傍は落ち着くと思うのは実感するしか無かった。
川沿いにあるベンチに腰掛けて談笑する男女を見てふと思いついた。
「…あ」
「どうしたんでぃ」
「一緒に、行きたいところあるんですけど」
いいですか?と問えば、彼は静かに頷いてくれたので、川沿いを歩きながら、目的の場所に連れていく。
連れていくなんて言うけど、実際はさっきと同様に肩を並べて一緒に歩いているだけ。
ここからならすぐ近くだったはず。少し越えた先に大きな大江戸橋が見えた。
その瞬間、ふわりと私たちを包んだ風と共にピンクの花びらが舞う。
「桜ですかぃ」
「はい。…綺麗ですね」
満開の桜が視界一面に映って、風で乱れた髪を直していると沖田くんも顔を前に向けた。
幾本の桜の木の下には既に数名の家族連れやカップルがお花見をしていて少し賑やかではあるが、持ってきた箱を差し出す。
「私、お菓子作ってきました。ここで食べませんか?」
「やりぃ。丁度小腹が空いてきたとこでした」
承諾してくれた沖田くんに私も笑い返すと、空いている桜の木の下に並んで座る。ずっと食べてもらおうと思っていた新作メニューのほうじ茶団子を渡せば、あっという間に彼の口の中に消えていった。
分かりずらいかもだけど、こうしてほっぺを膨らましている沖田くんはいつも美味しそうに食べてくれる。それが嬉しくて仕方ないのだ。
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尾っぽ(プロフ) - ままさん» 更新頑張ります!! (8月22日 21時) (レス) @page31 id: 96e7b68837 (このIDを非表示/違反報告)
まま - つづきを!! (2023年4月13日 22時) (レス) @page27 id: 21c8ee624a (このIDを非表示/違反報告)
尾っぽ(プロフ) - かっちさん» コメントありがとうございます!原作の沖田くんが好きなので笑自由奔放な沖田くんに振り回される夢主ちゃんが可愛いですよね笑更新頑張りますね^^ (2023年3月5日 8時) (レス) id: 96e7b68837 (このIDを非表示/違反報告)
かっち(プロフ) - この作品大好きです!!特に夢主ちゃんが可愛くて……!沖田君もキャラ崩壊一切無くて、カッコいいですね!更新待ってます。 (2023年3月4日 14時) (レス) id: 1b6cbbdaba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:尾っぽ | 作成日時:2023年2月17日 20時