story.10 ページ16
A松side
うーん、と延びをして、行きやすか！！
と声をかけた弟のその姿はなんの汚れもない普通の人間のように見えて、なんとも言えない虚しい気持ちになる。
この業界に入り込んだのは親からの成り行きで、だぁれも悪くないと言えば悪くないのだが、俺は時々考えて、駄目だと頭を振り、やめるということを何度も何度も繰り返してきた。
無意識に自分の手のひらを見る。そこにはなんの変鉄もない只の成人男性の手。だが、俺にとっては何でも意図も簡単に壊してしまう手。一度。あの忌まわしい夏の日に大事なものを壊しかけた手。いや、壊してしまったのだろう手。
俺という生き物は、この手に感謝をしながらも、この手に底知れない恨みを持った。
何故俺の能力は誰も救うことなんか出来ないのか、と。
......ここら辺で止めなければ、俺の虚像が壊れてしまいそうで、思考をストップさせる。
それでも考えなければ終わらないことだということは知っているけど。
いつまでたっても一人だけ成長できない俺を、この弟や兄貴はずぅっと待っていてくれている。
そんな意識はなくて、俺だけが抱えているものだとは考えたくない。だって他人が待っていてくれているなんて、そんなに嬉しいことはないじゃないか。そう考えておかなければ、頑張って作ってきた虚像は音もたてずに崩れていきそうだから。
と、ここで弟の姿が視界の隅にうつりこみ、俺はいつもの兄貴面を纏める。
そうだなー、あ、トッティ怖くてちびるなよ？
と、軽口を叩きながら俺は前へ進んでいく。
一度壊しかけてしまった大切で、失ってはならないものを二つも抱えながら。
いつか俺がちゃあん考えることができて、皆の前で堂々と自分自身でいられることができた日には、あの赤い兄貴は俺の事を誉めてくれるだろうかと考えながら。
誰にもばれないようにそっと、壊すことしか知らない、守ることが出来ないこの手を後ろへ隠しながら、俺は前に進んで行った。
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葡萄ゆづゆ(プロフ) - まま松さん» コメントありがとうございます！まま松さんの小説は大好きなのでそう言われて嬉しいです！これからも生暖かい目で見てくれたら幸いです！ (2017年9月4日 16時) (
レス) id: 9a1ec58e55 (このIDを非表示/違反報告)
まま松(プロフ) - 男主は初めて拝見させていただきました！とてもリズミカルで面白かったです！六つ子の会話とかが本物っぽくて笑ってしまいました（笑）更新頑張ってください！ (2017年9月1日 17時) (レス) id: adb325526a (このIDを非表示/違反報告)
葡萄ゆづゆ(プロフ) - butterflyさん» ありがとう！めっちゃ嬉しいよ(●´ω｀●)butterflyも作品作ったら見せてね！！ (2017年8月18日 11時) (レス) id: 9a1ec58e55 (このIDを非表示/違反報告)
butterfly - やっぱり文章綺麗ですごいねゆづちゃん！参考にさせていただいております( ´∀｀) (2017年8月17日 23時) (レス) id: 97c9d8dadd (このIDを非表示/違反報告)
葡萄ゆづゆ(プロフ) - ありがとうございます！！カラ松語が苦手なもんで…笑 褒めていただけて光栄で嬉しさで頭がいっぱいです！！頑張ります！！ (2017年8月5日 14時) (レス) id: 9a1ec58e55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄ゆづゆ | 作成日時：2017年5月6日 17時
