【文スト】俺が帽子をかぶる理由 【中原中也】

1話　？？？、新聞屋。 ページ3

──アメリカ、ニューヨーク




？？？｢ちょっと！速いって姉さん！！｣

声変わり前の若い少年の声が響く。



裏路地の薄暗い通りを二つの影が走り抜ける。


？？？｢シャム、どうやら行き止まりみたいだ。｣

急に走る速度を落として、
別の中性的な声が言う。


シャム｢えぇ……！そんなぁ。｣

少年は抱えていたカメラをそっと首にかける。



姉さん(とは言っても実の姉ではない)がゆっくり振り返る。


長い黒髪を二つにまとめ、低い位置で結んでいる。
キャスケット帽を目深にかぶり、
凛とした黒いスーツ。




少し経ってようやく、
イカツイ男たちがドタドタと向かって来た。

俺たち“新聞屋”がネタを握っているギャングだ。



男1｢ハハッ！行き止まりだぜぇ！！｣

男2｢八つ裂きにしてやらぁ！！｣



ボス｢まてまて、“新聞屋”取り引きしねぇか？｣

奴らのリーダーが前に出た。
姉さんも前に進み出る。


ボス｢お前たちが持ってる俺らの情報をながさない代わりに俺らの持っている情報を提供しよう。｣


敵はニヤリと笑う、
取り引きに姉さんが応じると思っているらしい。


？？？｢くだらない、そんな取り引きするより地道に集めた方が情報は確実だ。お前たちが本当のことを話さないかもしれない。｣

ボス｢んな！？そりゃ、そっちも同じだろう！？｣


？？？｢だから、闘うことになっても構わない。｣


姉さんが戦闘体制にはいった。

俺に向かって鞄が投げられたので慌ててキャッチする。



ボス｢上等だ！やってやる！！お前らぁ！｣

ウオオオゥッ！
ギャングたちのうなり声。


姉さんはあっという間に敵の急所をついて10人ものギャングを倒してしまった。


ボス｢な、な…………！？｣

男3｢う、噂は本当だったのか………｣

男4｢“新聞屋のレイン”は危険だって言う……｣


ボスは意識のある数人を引き連れて、
さっさと退散してしまった。



シャム｢レイン姉さん、いつ見ても格好いいなぁ！｣

レイン｢もう、シャムがなんか言うから道間違えたじゃん。行き止まり、面倒なのに。｣


文句をいいながらも俺の事を心配してくれているのがわかる。

行き止まりで敵と闘うことで俺を巻き込まないか心配してくれているのだ。


レイン｢シャム、行くよ？｣

シャム｢はい！｣



姉さんは今年、20歳。
俺は今年、12歳。


随分歳が離れているけど、
ずっと仲良く新聞屋をやっている。


裏社会の情報を載せた、
『裏新聞』を作っているのだ。

──１話

2話　シャム、探し人と夢。→←登場人物(←ネタバレを含みます)

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