１ ページ2
とある初夏。
私は目の前に座る彼女の話を聞き流しながら大きな欠伸をかましていた。
「ちょっとAってば、私の話聞いてる？」
「ふぁーい聞いてますよ園子さまぁ」
全く隠す気の無い嘘で固めた言葉を並べれば、目の前の彼女はため息をつく。そりゃまあ話しかけた相手がこんな態度をしていればため息をつきたくもなるだろう。
「あんたねぇ…せっかくこの鈴木園子様がここまで足を運んでやったって言うのに、その態度はなによ〜？」
「いひゃいれすそのこしゃん…」
私の態度に呆れた園子が割と強めに私の頬を引っ張る。これがなかなかに痛い。超スーパーウルトラ最強令嬢である園子は普段から育ちの良さが出ているのだが、なぜか私の前だと野蛮さが垣間見えてしまうのだ。まったく、暴力反対だ。
「いちちち…で、なんでしたっけ…？」
抓られた頬を押さえながらさっきの全く微塵も聞いていなかった話を聞き返せば、園子は再び呆れた表情をした。
「ったく…今日は蘭も部活だから２人で帰るわよって言ったの！」
「あーんだすたん！」
人の疎らになった教室内に私の指パッチンの音が響き渡る。なんだか周りの視線が一気にこちらに集中したような気がするけれど、気にしたら負けな気もする。
普段は鈍い音しかしないのに、こういう時だけ無駄にいい音鳴るのほんとよくないと思う。
「分かったならさっさと帰るわよ！」
「あいあいさー！」
勢いよく立ち上がった園子に着いて私も立ち上がる。そして教室内に居たクラスメイトに挨拶をしながら外へと向かった。
「飛行船？」
学校を出てすぐの道、園子が嬉々とした表情で話し出す。どうやらこの話がしたくて私のことを急かしていたらしい。
「そう！今度初飛行があるんだけど、Aも乗ってみない？」
園子曰く、鈴木財閥相談役の鈴木次郎吉さんが遂に飛行船まで作ったらしく、それに一緒に乗らないかということだった。
私は断る理由も無いので喜んでお受けすることにした。
まあ例え断る理由があったとしても、「もう蘭にも声を掛けてあるの、」と嬉しそうに言う園子を見たら断る理由なんて強制的に無くしてしまうのだけど。
しかし私は完全に失念していたのだ。
次郎吉さんが大きな事をする時は大抵何かが起こるということを。
まさかあんなことが起こるだなんて、この時の私はまだ知らない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 147人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柯(プロフ) - 青さん» アンハッピーセット、笑 突然の告白ありがとうございます！！ (2021年7月30日 13時) (
レス) id: d03fcb85aa (このIDを非表示/違反報告)
青 - アンハッピーセット一つください！お兄ちゃんに投げつける！！（ヤメロ）好きです（告白）最高かよ。 (2021年7月30日 12時) (レス) id: 157c6e138f (このIDを非表示/違反報告)
柯(プロフ) - 凛堂さん» あばばばありがとうございます！！！そう言ってもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです！！ (2021年7月26日 16時) (レス) id: d03fcb85aa (このIDを非表示/違反報告)
凛堂 - めっちゃ面白いですね！！ (2021年7月26日 14時) (レス) id: 1c8e857f37 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柯 | 作成日時：2021年7月8日 15時
