胡蝶の夢 (ページ5)

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＊泰志が誰状態。

あの、気持ちの悪い目をする教師に触れられてしまったした事実に、私は異様な程に気分が悪くなてしまった。
あの教師、私の苦手なタイプだ。気持ちが悪い。あの教師の目と雰囲気が。女を欲の捌け口としか見て居ない、あの眼差しが。上層部の腐ったミカン共を思い出させる。喉の奥から込み上げてくる吐き気に心が騒つく。
落ち着いて。騒つく心を鎮めよとしても拭えない気持ちに、私はとうとう地面に座り込む。
震える手でズボンのポケットから、何とかハンカチを取り出し、あの教師が触れた肩を何度も拭う。
しかし、何度拭ってもあの教師の手の感触が忘れられない。もういっその事……。
「おい。大丈夫か」
肩を捥ぎとってしまおうかと物騒な事を考えた直後、又もや見知らぬ声音が聞こえてき、俯いてた顔を上げると、其処には、赤い薔薇のシャツを来た可愛らしい女の子のような顔立ちをした青年が訝しげな表情で私を見詰めて居た。
「随分と顔色が悪りぃな」
青年は、地面に座り込む私の目線まで腰を屈めると、青年の手が私の頬へと触れる。
暖かい。青年から感じる暖かな体温に、少しだけ落ち着きを取り戻した私は、じっと青年を見詰める。
「何見てんだよ」
ジッと青年を見詰める私に、青年は少し不愉快な気持ちになったのか、青年は微かに柳眉を顰める。
「ごめんなさい」
青年を見詰めないよう、メモ用紙へ謝罪の言葉を綴る。
「お前……。喋れねぇのか」
「……」
首を縦にコクリ頷く私に、青年の表情が少しだけ和らぐ。
「ふうん。お前喋れねぇんだ」
目の前の青年は怪しげな表情で笑う。
「名前」
「？」
「お前の名前」
「……栗花落蓮。君の名前は？」
「泰志」
下の名前だけ告げる泰志に、なんか女王様みたい。とそんな感想を抱く。凄い上から目線。けど……あの子みたいで嫌いじゃない。
「蓮。お前、俺と一緒に来い」
有無は言わせない雰囲気を感じ取った私は、コクリと一つ頷き、泰志に付いて行く事を決めた。

あの時感じて居た気持ち悪さは、もう当の昔に私の中から消えて居た。