＊ ページ15
ミナミとの出会いを聞かせてくれたモモコは、うっとりとした表情で思い出話に花を咲かせている。しかし、すぐにうっとりとした表情から顔を引き締めて、真剣な表情で私の方へ顔を向けた。
「だから、ミナミリーダーの背中を追ってハンターになった、私は、彼女みたいに強くなって、彼女と肩を並べて立ちたいの」
『……応援しているよ』
「えへへ……。私ばかり話しちゃった。あなたは？ どうして、ハンターになったの？」
『……私は』
モモコみたいな、誰かを尊敬してハンターを目指したわけじゃない。特別理由もないのだ。誰かを尊敬してるとか強くなりたいとかじゃなくて……。私は、賑やかな晴空広場から視線をそらして、遠くの空へ視線を向けた。街の上空では、すでに夕陽が照らされており、青の中に浮かぶオレンジ色がうっすらと彩っていた。私の記憶の中で覚えていることは、14年前のあの場面でも。今のような夕暮れ時だった。泣き叫び助けを叫ぶ人々の声は、ワンダラーの咆哮の中で、あっさり飲み込まれて儚い命が散っていった。あのとき、力もなにも微かにしか残っていなくて、無力な私は。ボロボロとなった街並みをあの子と一緒に、逃げ惑っていた。決してはぐれてしまわないよう。ぎゅっとお互いの手を強く握り合って。背後から追いかけてくる怪物が、どんな姿をしているかも知らないまま。無我夢中で走った。だけど、後ろからただようあの子の血の匂いと痛みが背中を貫いて、心臓を刺すまでは。痛みに耐えながら、自分よりも重傷をおうあの子を庇いながら、崩れたビルでできた防壁へ必死に這いあがろうとした。すると砂ぼこりが舞うなか、一粒の種子が視界へ入った。種子から静かに伸びる芽が地面を突き破っていた。まだ、生きているのであれば。私は、どうなってもいいから、この子を怪物たちの追われる獲物なんてさせたくなかった。危機をまえにして、逃げることしかできない無能なんて……。このときだけは、忌まわしかったはずの力をどれだけ渇望したことか。
「……」
「その顔、さては遠い昔を思い出してるね」
黙り込んでしまった私をみて、モモコはにっこりと笑っている。いけないな。ふとしたことで、昔のことを思い出してしまうなんて。私は、モモコに悟られないよう嘯く。
『……すごいね。占いだけじゃなくて、人相も見れるんだ？」
執筆
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 52人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クジラ大好きマン | 作成日時：2024年2月10日 16時
