光に消える ページ11
青年は、私の手を握ったまま閉じていた瞼を開ける。
「終わった」
彼は、私の作戦通り。全てのワンダラーを消滅してくれた。私と共鳴して、ここまで強くなった人は彼が初めてだ。離された手のひらを眺めながら、ぼんやりとそんなことを考える。
「波動が静まり、ワンダラーもすべて消えた。あんたのおかげだ」
『……その代わり。コアが一つも残っていませんがね』
ほんの少し意地悪で嫌味を一つ溢せば、彼は『しまった』目を見開かせた。
「うっかり吹き飛ばしてしまった……」
「……」
彼の性格ゆえか。はたまた、彼が天然なのか。私の嫌味が効かず、素直に反省している様子が伺える。ほんと、この人種は扱いづらくて苦手。
『……まあ。この残存エネルギーでも役にぐらいは立つでしょう』
手のひらに落ちてくる粉粒となった残存エネルギーを見つめた後、私は青年の方へ視線を向けた。
『私は、氷雨蓮。霊空の新人です。あなたは？』
「セイヤ。そうだ、頼みがあるんだが」
『何でしょうか？』
「誰かに、ここの状況について聞かれたら……この廃墟の中には、ワンダラーしかいなかったと言ってくれ」
まるで自身のことを隠したがる様なことを言う。怪しまれると思わないのだろうか。いや、怪しまれると分かっていながら言っているんだろう。ならば……。
『気は乗りませんがいいですよ。助けてもらった、恩もありますし』
「悪い。恩にきる。今度、会ったとき、説明する」
『そうしてもらうとありがたいですね』
そんな、会話をしていたさなか。さきほど、仲良くなったばかりのモモコの声が、ハンター装備の通信機から聞こえてくる。
「蓮ちゃん！ 今、そっちに向かってるんだけど、大丈夫？」
持っていたショットガンを投げ捨てて、モモコは私の身体をくまなく触る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 52人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クジラ大好きマン | 作成日時：2024年2月10日 16時
