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昨夜は、夜遅くにこの街へたどり着いた為、本来の目的地である哭倉村へ行くことができず宿屋を借りた。朝早く、一泊過ごした宿屋を出て、適当にタクシーを引っ掛け、哭倉村へ向かう。足場の悪い山道を通り、少ししてから哭倉村と書かれたトンネルへ到着した。トンネル前でタクシーは停止するのを確認してから水木は車の扉を開けて、外へと下車する。私も水木へ続いて、タクシーから下車する。水木は、荷物の入った鞄をタクシーから下ろすと運転手へ代金を払い『ここで、大丈夫です。ありがとうございます』頭を軽く下げて、それだけを告げた。
「よし、行くか」
ゆっくりトンネル内へ向けて歩き始めた水木の背を追いかけるようにして、蓮も後へ続く。トンネル内は、昼間だというのにも関わらず、どこか薄暗い。
トンネル内を抜けて、視界へ映り込んだのはのどかな村の景色。私達は、小さな水路を通り越して村へと続く山道を歩く。見わたせば、見わたすほど。この不思議な村だった。東京とは違った、緑が多く茂る村を興味深げに眺めて歩いていると。道の先で、喪服を着込んだ、私とそう変わらない年頃の少女が困った表情で腰を屈めていた。
「あれは……」
水木は、少女の顔に見覚えがあったのか急いで少女の方へ駆け寄ると少女へ向けて静かに声をかけた。
「どうされました？ ああ、下駄の鼻緒が切れていますね。借してください」
「あ、あの。あなた方は？」
見知らぬ人に、急に声をかけられれば少女が戸惑ってしまうのも無理はない。しかし、水木は戸惑う少女とは裏腹で酷く冷静な声音で自身の身を明かす。
「東京から来た、水木と申します」
『同じく東京から来た、氷雨と申します』
水木の自己紹介へと続いて自身も少女へと名を明かす。
「さて、下駄を見せて下さい」
少女のすぐそばで腰を下ろして、少女が持っている下駄の方へ、優しく手を伸ばす。少女も戸惑いながらも、おずおずと水木の方へ、持っていた下駄を渡す。
「片足だけで立っているのもお辛いでしょう。どうぞ、私の肩へ手を置き、足はこちらへお乗せ下さい」
「……すみません」
少女は、水木へ言われた通りに片足を水木の右足へ乗せて、体制を崩さないように水木の肩へ手を置く。水木は、スーツのズボンからハンカチを取り出して、丁度いい長さに布を噛み破ると、手慣れた様子で下駄の鼻緒を直す。さらりと風に吹かれた少女の癖毛のない美しい黒髪が靡く。少女の頬は、どこかほんのりと赤く色づいている。
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クジラ大好きマン(プロフ) - 仮主さん» お返事が遅くなり申し訳ありません。言葉を褒めていただきありがとうございます。まだまだ拙い文章力ではありますが、これからも頑張らせていただきます。 (4月18日 23時) (
レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
仮主 - 言葉が綺麗と言いますか、美しいと言いますか,,,,,,何よりもこのような素敵な作品に出会えてよかった！ (3月29日 21時) (レス) @page10 id: 09812a6f88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クジラ大好きマン | 作成日時：2024年1月7日 11時
