見せない涙 (ページ15)

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始まりの合図ページ15

私の返答に彼等は目を見開き驚愕する。

「本当に！？」
「良いんですか！？」
「2人とも驚かないで下さいよ。折角、賢者様が信じて下さったのに」

2人の反応に苦笑いを浮かべるシャイロックに連れて、2人も嬉し気に笑顔を浮かべた。

「喜んでるんだ。初対面の人間なのに、魔法使いを信じてくれるなんて」
「ありがとうございます。賢者様！この御恩は一生忘れません！」

喜ぶ2人とは対処的で老男は焦った様子で目を見開いて驚愕して居た。

「な……何を馬鹿な事を！良いんですか。魔法使いと言うのは、性悪で尊大で身勝手で……」
「それ以上、一言でも言ってみろ。性悪な魔法使いが貴方を呪うよ」
「っ……」
「世界を守る為に戦ったのは、その性悪で尊大な魔法使いだ。お前達みたいな奴を守る為に、先生も仲間達も倒れて行ったんじゃないか！」

悲痛な叫び声を上げて訴えるヒースクリフへ老男は押し黙る。

「そ……、それは……」

老男も思う事があるのか言葉が詰まって出て来ないでいる。そんな、老男へ気の弱いそうなクックロビンが咎める。

「い、言い過ぎですよ。大臣」
「お前まで言うな！こうなったら力づくでも、お前達を押さえ込んでやる！」
「へえ。どうやって？皆さん、夢の中ですけど」
「ふふ……。馬鹿め！外には兵士達が待機している！疲労しきったお前達等、相手では無い！それも、魔法科学兵器を装備した大側……」
「エアニュー・ランブル！」
「……」

老男の言葉を遮って唱えられた誰かの呪文。衣服だけを残して消えた老男。散らばった衣服の中から現れた小さな髭を生やした鼠の姿。

「チューチュー！」

鼠の尻尾を摘み上げて窓から入り込んで来た1人の青年は可笑しげな表情で笑った。

「ニャーオ。食べちゃうぞ」

窓から現れた青年の姿を見て、私は目を細める。彼が、あの分離したムルの本体。

「何処に行って居たんですか？ムル」
「月にお別れしてた！」
「月に？相変わらず、イカれてるな」

ムルの本体は、エレベーターと出会ったムルとはまるで別人の様で。知的で紳士なムルの魂の欠片とは違い、今は悪戯っ子な野良猫の様だ。

「話は後だ。皆、急いで！」
「分かった！」
「チュー！チュー！」

掴んで居た鼠をムルは放り投げる。その鼠をクックロビンが慌て
た様子で受け取った。

「あの、大臣は……！？」
「半日もすれば元に戻ります」
「賢者様、西の魔法使いのムルだよ！賢者様は飛んだ事ある？」
「……？」
「じゃあ、俺と行こう！おいで！」