色をなくした世界 (ページ6)

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序章ページ6

何一つ持たずに辿り着いたこの世界で、独りぼっちの私を麻衣が拾ってくれた。無表情な私とは対照的で感情豊かで良く笑う子だった。明るくて太陽の様な子で大好きだった。

「麻衣ちゃんと蓮ちゃんは本当に仲が良いわね」
「本当に、麻衣は蓮が大好きだな」

血の繋がりはないが本当の姉妹の様に仲の良い私達を優しい眼差しで見守りながら微笑む私達の両親。そんな、母親に麻衣は曇りなき笑顔で。

「うん！だって、わたしれんがだーいすきだもん！まいね、しょうらい、ぜったいれんとけっこんするんだー！」
「まあまあ」

私に抱き付いてぷっくらとした柔らかい頬で頬擦りする麻衣の頭を優しく撫でながら遊んでいたあの日。幸せで暖かった日常。優しいくて大好きな麻衣と麻衣と同じで見知らぬ私を麻衣と同じくらいの愛情を持って育ててくれた両親。けれども、もうそんな日常は戻って来ない。あの日、あの事故で両親や麻衣は帰らない人に。歪でひしゃげた車内の中、重傷を負った私は、動けない状態でもまだ暖かくて温もりのある麻衣の手を決して離さなかった。そんな時、あの大きな母体を表した霊が現れて麻衣の霊を何処かへ連れ去って行った。

あの時、私に後ほんの少しの強靭な意志で身体を動かす事が出来ていたら、麻衣を連れ去られずに済んだはず。だから、待っていて。麻衣のお母さん、お父さん。

『麻衣は必ず、私があの霊から取り返してみせる』

両親と麻衣の骨だけが埋葬されたお墓の前で、魂とだけなった両親に花束を手向けて、私は心に誓った。どんな、手を使っても麻衣を必ず取り戻してみせると。