色をなくした世界 (ページ34)

今日:30 hit、昨日:8 hit、合計:5,918 hit

＊ページ34

それだけを伝えて、ナルはベースから離れていってしまった。そんな、ナルの後ろ姿をみていた滝川は。

「どうなんのかねえ。あの、ボウヤ。たいそうな機械、持ちこんでハデにやらかしてるが、ほんとうに有能なのかよ」

不満と疑い。そんな感情が滝川から見え隠れしていた。

「……ほんなら、ボクは」
「おっ。いよいよ。エクソシストのおでましか？」
『なにか、手伝いますか？』
「よろしいです。それよりも、祈祷を始めたら機械に注意せえやです。なにか、反応があるかもしれへんです」
『……わかりました』

ジョンもベースから出てゆき。ベースに残ったのは、黒田と滝川、それから松崎だけだった。私は、モニターまえのイスに座り込み。考える。霊は、いないはずなのに一人でに動くイス。今までの数々のポルターガイスト。私は、そっと黒田の方へ視線を向けた。彼女が嘘をついていることは、目に見えてわかっていた。広がった嘘が引っ込みがつかなくて、いまもなお……。

『蓮……』

名前を呼ばれて、ハッと我に変えれば。マイクに設置されたトランシーバーからナルの声が聞こえてきた。

『そっちの様子はどうだ？』

声を出すことのできない私は、どう返事を返そうか悩んでいたとき。隣にいた滝川が、気付き。さりげなく、ナルへ返事を返した。

「今からジョンの奴が、お祓いをするみたいだぜ。おっ。来た」

モニター越しから祭服に身を包んだジョンが映り込む。ジョンは、持っていた聖水を撒きながら聖書を読んでいく。

「……天にまします。我らの父よ。願わくば、御名を崇めさせたまえ。……未心の点になるごとく、他にもなさしめたまえ……。はじめに、言があった。言は神と共にあった。言は神であった……」

ジョンが聖書を読み上げていくなか。私は、なにか違和感を覚えた。それは、滝川も一緒だったみたく。

「声をあげてみろ」

滝川の指示に従い。私は、モニターの音量を上げた。すると、さきほど聞こえてきた音と同じく。