色をなくした世界 (ページ30)

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地面にたくさんの窓ガラスが散らばり、そのなかにはほんの少しの血痕があった。先ほどの窓ガラスの破片で校長が、額の怪我を負い、その血が床へ落ちたものだ。校長は、教頭の付き添いのもと、旧校舎から急いで出て行き、病院へと向かった。そんな、さなか。

「……心配ありませんわ、だって。除霊なんて、できてないじゃない。校長先生にケガまでさせちゃって」

黒田が松崎を小馬鹿にしたように嘲笑う。それには、松崎もさすがに言い返せないのな、ぐっと唇を噛んで悔しそうな表情を浮かべていた。

「あれは、事故ですわ」

真砂子が酷く落ち着いた声音で、黒田の言葉を否定する。

「……そうよねえ。アタシは、ちゃんと……」
「除霊できたという意味ではありませんわよ。ここには、はじめから霊なんていませんもの」

助け舟を出されたと思いきやどん底へ叩き落とされた、松崎は溜まっていた鬱憤を晴らすようにして、真砂子へ言い返していた。そんな、彼女たち3人をよそで。ジョンたちは、先ほどのことを話す。

「……偶然ですやろうか」
「やーっぱ。なんかいるんじゃねえ？巫女さんじゃ、他におえねぇような強いやつが」
「だったら、もっと機械に反応があってもいいはずなんだが」

ナルたちが話しあうなか、蓮だけはモニターへ釘付けになるように見つめていた。そして、あることへ気がついた。

「……」

話し込んでいたナルの袖を軽く引っ張る。

「どうした？」
『……これ』

私は、指をさして西の教室が映し出されたモニターへ向けて、指をさす。

『昨日、カメラを置いた教室。まん中に、イスなんてありませんでしたよね？』
「……誰か、西の教室に行ったか？」
「いや……？」

みんなの視線がナルの方へ視線が向く。ナルは、慣れた手付きで機械を扱い、録画されているビデオを逆再生する。先ほどの窓ガラスが割れる場面。騒ぐ、校長たちが録画されているさなか。西の教室に、イスが勝手に一人でに動く。そして、先ほど。私が見つけた位置まで動くとピタリとそこでイスは動かなくなった。

「……」

一同が黙然とするなか。黒田が口を開く。

「ポルターガイストじゃないかしら。『騒がしい幽霊』って、意味だったと思うわ。霊が物を動かしたり、音を立てたりするのよ。そうでしたよね。渋谷さん」
「詳しいね。だけど、ポルターガイストとは思えないな。ポルターガイストが動かした物は、暖かく感じられるものなんだが、あのイスに温度の上昇は見られない。そんな例は、あまりないんだ」